この時のハンセンはレフリーの死角をつき、コーナーのバックルに頭をつけながら相手選手の身体を反らせ続けた。厳密にいえば反則によるタイトル移動。しかしその後の数多くのタイトルマッチや日米における大活躍を考えれば、歴史に残る決め技だったと言える。

『サソリ固め(スコーピオン・デスロック)』も『逆エビ固め』の派生形と言える。相手選手の両足間に自らの片足を入れクロスさせるように固めた状態で反らせる。

 日本マット界での第一人者は長州力で若手時代から持ち技にしていた。名勝負数え歌、と呼ばれた藤波との勝負では、この技がたびたび名場面を演出。藤波も長州相手に『サソリ固め』を用いることもあり、「掟破りの逆サソリ」と呼ばれた。

 また『サソリ固め』はWWEのスターだったブレット・ハートが名付けた『シャープシューター』とも呼ばれる。しかし『シャープシューター』は重心が高い位置で固めるため、『サソリ固め』とは異なるという意見も多い。

『サソリ固め』で忘れてはならないのが、全日本などで活躍した石川孝志。決して派手なタイプではなかったが、相撲上がりの強靭な下半身、基本に忠実なスタイルは安定感抜群。全日本プロレス時代、ジャパンプロレスとの対抗戦(86年3月13日、vs小林邦昭)では、場外へのブレインバスター敢行など、時折みせる破天荒なファイトも印象に残った。

 石川は『サソリ固め』を決め技というより、つなぎの形で使用することが多かった。腰をどっしり落とした技は、長州のものとは違う色気を感じさせたものだ。

『サソリ固め』から派生した技もいくつか存在するが、知名度が高いものは『テキサス・クローバー・ホールド』。名前からもわかる通り“テキサスブロンコ”ことテリー・ファンクの得意技で、国内では天龍源一郎などが使用していた。

 近年、再びこの技に注目を集めさせたのが棚橋。決め技で使用することは稀だったが、試合終盤の重要局面でたびたび使用していた。しかし1月5日、ジェリコに敗れた試合では1度も見せなかったため、試合後はネット上を中心に「なぜ使用しなかったのか?」と議論も巻き起こったほどだ。

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溢れだしたライガーに流れる新日本のDNA