布団ならぬ、眠れるうどん。その独創的なアイデアは18年夏、東京・新宿のうどん店で生まれた。悟空のきもちのスタッフ数人でざるうどんを食べていた時に、ある女性スタッフが何気なく漏らした「この中で寝たい」という一言がきっかけだった。そうかそうかと、ざるの上にめんを縦横に並べると、そこに現れたのはうどんならぬ布団だった。その完成度の高さに盛り上がり、商品開発へと突き進んだという。

 さらに、品質管理の厳しさに定評がある伊勢丹の協力を得ることができ、安全面にも配慮したうどんが完成。19年8月に商品サイトを立ち上げると、たちまちツイッターで拡散され、初回生産分の500個が完売した。予想を超える反響に、急きょ12月から生産体制を月1万個に強化することとなった。

 ゴールデンフィールドの担当者によると、悟空のきもちの商品開発は、いつも突然始まるという。かつて会計士として働いていた金田淳美社長が、男性が多い職場に息苦しさを感じて創業した同社は、現在、スタッフ約100人はすべてセラピストの女性、金田社長以外に役職はなく、人事や総務、広報、営業などの業務は全部外注という、かなり珍しい組織となっている。

 各店舗にマネジャーや店長はおらず、それぞれのスタッフが、一定の勤務時間を基準に、自由にシフトを組み立てる制度を取っている。スタッフ同士の休みの交換は、会社を通さず、LINEでやり取りするだけ。心斎橋店の岸本さんは「1日フルでしっかり働けば休みの日を増やせます。しっかり休めるので、1人1人のお客様に集中できますね」と話す。

 自由な組織ゆえか、スタッフ同士でご飯を食べている時に、新企画のアイデアが出ることが多い。「それいいんじゃない」と盛り上がると、スタッフらのLINEグループが立ち上がり、ゆるい意見交換が始まるという。「強制的コミュニケーションの場となる会議をやっても誰も意見を出さないので、スタッフ同士で自由に意見交換をさせています。現在も、実現するかどうかはさておき、いろいろな場所でさまざまなアイデアが飛び交っています」(担当者)

 現在進行形で動いているアイデアの一つを担当者に聞くと、「夢の中の世界を開拓すること」と明かしてくれた。

「『絶頂睡眠』を売りにしている悟空のきもちらしい、正統派なアイデア。確実に眠らせた先の世界をつくり出します」

 一体どんな世界なのか予想もつかないが、楽しみなのは間違いない。(ライター・南文枝)