今年もいろいろありました (C)朝日新聞社
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「2019ユーキャン新語・流行語大賞」ツイート数ランキング( NTT データ調べ)
「2019ユーキャン新語・流行語大賞」ツイート数ランキング( NTT データ調べ)

 12月5日に発表された「2019ユーキャン新語・流行語大賞」(以下、「新語・流行語大賞」)。これが発表されると、いよいよ年末が迫る「もういくつ寝ると」モードに突入となる。今やそんな師走の風物詩でもある国民的賞のトップテンに輝いたワードは、果たしてTwitter上でもバズったのか?

【画像】「2019ユーキャン新語・流行語大賞」ツイート数ランキングベスト20

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「Twitterトレンド大賞」PR事務局が12月26日に発表される同大賞に先だって、「新語・流行語大賞」にノミネートされた30ワードのツイート数を調査。簡単に言うと、「新語・流行語大賞」の大賞やトップテンに選ばれる言葉って、Twitter上でも流行ってるの?という調査だ。そのランキングと、実際にトップテンに選ばれた語を比べてみた。

 はい。ほとんど流行ってません。

「新語・流行語大賞」のトップテンのうち、Twitterのツイート数ランキングのトップテンに入ったものは、「令和」と「○○ペイ(対象語はpaypay/メルペイ/Lineペイ)」の、わずか2語のみ。「新語・流行語大賞」で大賞に輝いた「ONE TEAM」にいたっては、ツイート数ではノミネート30ワード中、25位という体たらくとなっている。

 しかも、ノミネート30ワードの総リツイート数は約9500万ツイートで、その半数以上にあたる5752万ツイートをトップの「令和」が占める結果に。まあ、趣味嗜好が細分化して、どんなものでも大ヒットが生まれにくい世の中なのはわかるけど、ネットから見ると「令和」以外は、「どっかで流行しているかも語」くらいに考えておいたほうがいいのかも。

■芸人の流行語は一発屋のシグナル

 ついでにその「どっか」での流行は、今どうなっているのか? 流行した時期にもよるが、新語・流行語大賞にノミネートされた言葉は短命という新語・流行語大賞=デスノート説がある。知られているのが、お笑い界からノミネートだ。

「グ~!」(08年エド・はるみ)、「ワイルドだろぉ?」(12年スギちゃん)、「35億」(17年ブルゾンちえみ)など、芸人本人はともかく、言葉そのものは一発屋で終わることがほとんど。数年前には「ジンクスを恐れて受賞を拒否する芸人もいる」という噂も聞くようになり、今年はとうとうお笑い界からのノミネートがゼロになってしまった。

 では、ほかのノミネート語はどうなのか。まず「タピる」。言わずもがな、「国民食」とも言われるようになったタピオカドリンクを飲む?食べる?ことを言う。たまたま9月に取材で、激戦区と言われる新宿周辺の人気タピオカ店を回ったので、そのときはまだけっこうあった行列がどうなったか、ざっと見てきた。

■人気タピオカ店の行列の今

 人気店では平日の夕方でも、タピオカドリンクが出てくるまでに1時間近く行列に並んだこともあったが、今は長い列でも4~5人ほど。並ばず買える店もけっこう増えていた。でも、「すわ、ブームの終焉!」と結論を出すのはまだ早い。知り合いの20代のタピオカ女子もこう語る。

「ホットも増えてきたけど、タピオカの基本は冷たいドリンク。毎年秋になるとさーっと客が少なくなるのは、ここ数年のタピオカ店の“あるある”ですよ」

 また食欲が落ちる夏は、食事の代わりにタピオカドリンクを飲んでいる若い女子もいたようだが、食欲の秋になってからは「モリモリ普通の食事を食べている」そうだ。

 東京商工リサーチが379万社のデータベースから「タピオカ」の記載がある企業を抽出したところ、今年3月には32社だったものが、9月になると約2倍の60社に激増。木下優樹菜のように、タピオカ店を舞台にしたトラブルも報じられるくらい、タピオカ店はどこの町でもよくある店に。タピオカ店主がタピオカを茹でながら事件を解決する「タピオカ探偵」あたりがドラマになる日もきっと遠くない。そうしてわざわざ激戦区にやってきてまで行列に並ぶ人が少なくなったというのもあるのだろう。

 ちなみに取材で「一生分のタピオカを飲んだから、見るのもいや」と思っていた自分も、その後、異常気象で暑いくらいの日があると、ふと気がつくとタピオカドリンクで身体を冷やしていたことが何度か。流行語になったのを機にブームが終わってしまったのかの結論は、来年、寒さが緩んでからに持ち越しだと思う。

■「#KuToo」は正しい新語・流行語

「#KuToo」もその後の展開があった。そもそも「#KuToo」とは、女性のみにハイヒールやパンプスを強いる企業の服装規定に抗議する活動のこと。ハッシュタグ#MeTooに、「靴」と「苦痛」をひっかけた新語となっている。

 今どき平気な顔で女性にヒールやパンプスを義務づける職場に感じる苦痛に共感が集まり、最近は女性の「メガネ禁止職場」の問題にも波及。一方でヒールやパンプスは、締め付けられたり、靴ずれがおきたり、実際に足が受ける苦痛も深刻だ。たぶん自分は生まれてからこれまで100足近いパンプスを買っただろうが、その8割以上は歩くたびにドラクエの毒沼でHPを吸い取られるような痛さで、泣く泣くお蔵入りになっている。

 ココ・シャネルらが窮屈なコルセットから女性たちを解放してから約100年。このテクノロジーの時代に、なんでヒールやパンプスはいまだに足が痛いのか。そんな素朴な疑問に答えるかのように、今年は例えば、伊勢丹新宿店や高島屋大阪店などでも女性靴売り場に3D足型計測機を導入し、その人にぴったりのサイズの商品を提案するサービスをスタート。また9900円でオーダーパンプスなど作ってくれる婦人靴ブランド「キビラ」なども人気となっている。

 社会に向けては別の問題についても提起をおこない、さらに不便で当たり前だとみんなが諦めていたモノにも、人々の目を向けさせた。しかも、これまでなかったバリバリの新語。「#KuToo」は一発屋で終わらない、正しい新語・流行語です。

■無駄遣いを誘発する?「○○ペイ」

「○○ペイ」の命運も上がったり下がったり忙しい。PayPayを例におさらいしてみよう。太っ腹の「100億円あげちゃうキャンペーン」を始めた18年12月、街中に「ペイペイ!」の決済音を轟かせた頃の登録ユーザー数は、ほんの100万人程度。消費者還元事業が始まった19年10月には1500万人まで躍進し、11月17日は2000万人突破を発表している。

 インパクトは絶大だったものの、度重なるキャンペーンがかえって不安視されるようになっていた11月。親会社のヤフーと、ライバル相手のLINEペイを持つLINE社の経営統合が発表され、実は厳しかった両社の台所事情が露呈する。とはいえこの統合が好感されたほか、オリンピック後に実施予定のマイナンバーカードを使った新たな消費者還元制度(25%のポイントを還元)を政府が発表し、○○ペイにはさらに追い風が吹くことになった。

 まあ、消費者にとっては、手軽にスマホで買えるだけに、キャッシュレスは無駄遣いを誘発すると実感している人も多い。コンビニで買えるくらいのモノだからいいでしょと思っても、消費者還元制度が始まってからはとくに、お得だからといろんな○○ペイを使ってついつい買い物。自分の場合、なんだかんだと毎月合計4~5万円は使っていたりする。全部コンビニで買ったとすると、2%還元で毎月800~1000円が戻ってくる計算。うーん。ありがとう? 

 いずれにしても、鉄板で残る言葉と言い切れるのは「令和」のみ。生まれては消え、消えては生まれる流行語。だからこそ、毎年発表されるということで。(文/福光恵)

「2019ユーキャン新語・流行語大賞」大賞
大賞
「ONE TEAM」(ラグビー日本代表チーム)
トップテン
「計画運休」(国土交通省/水嶋智 国土交通省鉄道局長)
「軽減税率」(秋葉弘道 有限会社アキダイ代表取締役社長)
「スマイリングシンデレラ/しぶこ」(プロゴルファー 渋野日向子)
「タピる」(タピりすと。華恋、タピりすと。奈緒)
「#KuToo」(アクティビスト 石川優実)
「〇〇ペイ」(PayPay株式会社/中山一郎PayPay株式会社代表取締役社長 執行役員CEO)
「免許返納」(免許返納された全ての人)
「闇営業」(FRIDAY編集部/藤田康雄FRIDAY編集長)
「令和」(御田良知 坂本八幡宮宮司)