その一つピースは、PUと車体のマッチングだ。ホンダPUは徐々に成熟してパワーを出せるようになり、レッドブルとトロロッソの車体がそのパワーを速さに繋げることができた。PUだけでも車体だけでも勝つことは難しい。融合して初めて「マシン」になる。

 メルセデスを見ればわかるが、やはり重要なのは総合的なパッケージがあってこそ速さが生まれてくる。ホンダ・レッドブル陣営の綿密で実直な協働が、ブラジルでようやく実った。遅すぎる? そんなことはない。この体制での協働はまだたった1年だ。メルセデスが何年もかけたところを、今、猛追している。このデータは必ず来季のマシンにフィードバックされ、ノウハウになる。どうすればPUはパワーを出せるか、どうやればパッケージとしての速さを出せるか。

 シーズンの一瞬だけ速ければいいわけがない。ホンダ・レッドブル陣営が狙っているのはWチャンピオンだ。それもメルセデスに対抗できるほどの継続性をもってして。サーキットだけではなく、マシン開発でも安定したスピードが大事だ。このピースにはそういう意味がある。

 もう一つのピース、それは自信である。F1はマシンを使ったスポーツだが、最終的には人間が判断し、人間が動かす。特に超高速で物事が進む中ではメンタルが重要になる。判断力、観察力、肉体的運動力。自信を失えば必ずにぶる。自信をもってこそ、人間の力は発揮できるのだ。正しい自信は脳の働きと体の動きに直結する。ドライバーはもちろん、ピットクルー、エンジニア、メカニック、レーシングディレクター、チームの全ての人間に正しい自信が必要だ。ホンダ・レッドブル陣営にはそれがあった。

 フェルスタッペンも自信を持って走っていた。セットアップも決まり、終始安定した走りを見せた。ピットストップでメルセデスのルイス・ハミルトンに2度前に出られたが、あっさりとパスしていった。レースを完璧に支配し、2度のセースティーカーの導入、再スタート後もハミルトンをパスし、誰も近づけなかった。もう焦りの色は全く無い。今までにない「勝者の風格」を見せつけた。子どもっぽいところも魅力の22歳、今回は大人なレースだった。来季は勝者ではなく、王者になることを願ってやまない。

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セナと本田宗一郎氏は何を思うか