最終ラップのフィニッシュライン手前、猛追してくるハミルトンをガスリーは必死に、自信をもってアクセルを踏み、メルセデスをトロロッソ・ホンダで抑え込んだ。ハミルトンのマシンにダメージはあったが、ストレートスピードは上回っていた。たった0.062秒差。ハミルトンのオンボードカメラには先を行くHONDAのロゴがしっかりと映っていた。ガスリーもレッドブルでは結果を残せず、トロロッソに降格した。しかし、トロロッソのマシン特性とドライビングスタイルがマッチし、レッドブル在籍時よりいきいきとした走りを見せ、最高の結果で速さを示した。

 「伸びる時には必ず抵抗がある」

 ホンダはブラジルで世界に向けて咆哮を轟かせた。抵抗に負けず、苦しさを糧にして、真っ直ぐに仕事を積み重ね、自信を持って。

 レッドブル・ホンダのアレキサンダー・アルボンも素晴らしいレースを見せた。最終盤はフェルスタッペンに次ぐ2位を走行し、一時期はホンダが表彰台を独占するかと思われたがハミルトンとの接触で14位フィニッシュ。レース後のインタビューは笑顔で前向きなコメントを残していた。ポジティブでアグレッシブ、表彰台はすぐそこにある。

 トロロッソ・ホンダのダニール・クビアトは予選ではQ1敗退となったが、荒れたレースの中を走りきり10位入賞、1ポイントを獲得した。決勝のベストラップもガスリーと変わらないペース。予選さえ良ければ結果も付いてくる。ドイツGPの3位表彰台が証左。最終戦、自信をもって走ってほしい。

 ブラジルといえば、ホンダエンジンで3度のワールド・チャンピオンシップに輝いたアイルトン・セナの母国。そして今年で没後25年。しかし今でもなお、ブラジルの人はセナを愛し続け、名前を陽気に叫んでいた。天国でセナと本田宗一郎氏はどんな思いでレースを見ていたのだろうか。

 残すは最終戦、アブダビGPとなった。どのチームも来季を見据えて必死に戦いに来る。気持ちよく来季を迎えるためにも素晴らしいレースを期待したい。願わくば、ホンダの連勝を。(文・野村和司)