提携する僧侶にとって気がかりな「お布施」の入金についても説明があった。最低金額部分についてはシステム利用料を差し引くが、チップにあたる「上乗せ」分は入金された全額を渡す。従来「定額」をうたっていたこともあり、僧侶は現場で「お気持ち」を渡されるようなことがあっても「お断りする」取り決めになっていたこともあり、新システムはお坊さんにとってメリットのあるものだ。

■ニセモノ対策は?

 ところで、ネットでお坊さんを頼むというと「ニセ坊主」が混じっているのじゃないかなど、ナナメ目線になる人が少なくない。しかしそもそも、僧籍をもった「ホンモノ」だからいいとは限らないというのが、わたしの実感だ。

 東日本大震災のあった年に父の葬儀を体験した際のことだ。宗教学者の島田裕巳さんの著書を読んで「父の戒名」をつけたことがあった。実家は関西の地方都市の檀家で、ご高齢の住職に要望を伝えるやいなや声色を変「ひとのビジネスに手をつっこむ気か!!」と激昂されたことがあった。

 誇張でなく「ビジネス」と声を荒げられたときには、お坊さんが「ビジネス」と言うのかとポカンとした。そんなこともあり「お坊さんの役割」って何?と考えるようになった。

 以来、知り合った僧侶や葬儀にかかわるひとたちの話を聞き「弔い」の意味を問い、話を聞いては迷い、その過程を本にもしてきた。だから「派遣僧侶は質が落ちる」との考えはないし、話をうかがった熱意ある僧侶の中には「私も派遣登録しています」というお坊さんもいたし、古寺の住職が「こっそり」登録していることもある。そうしないとお寺はやっていけないところまできているということだろう。

 ただ、お坊さんをネットで頼む利用者については「より安い」を求める人たちだとの思い込みがあった。しかし、そうとも限らないのかもしれない。

「データはとっていませんが、ご利用いただいた方から、これまでにもお気持ちを上乗せしたいという声は少なからずありました」と話すのは「お坊さん手配事業部部長」の小野敬明さん。

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仏教会との歩み寄り