もし、渋野がグランドスラムや世界ランクNo.1などゴルファーとしてさらなる高みを目指すのであれば、なるべく早い段階で渡米すべきだろう。ツアーのトーナメントに出場するには各大会の主催者推薦をもらうか、シード権を得るための予選会で上位につける必要があるが、渋野は申請さえすれば年間を通じて世界最高峰の舞台でプレーできるからだ。

 国内でこのまま過ごし、いずれ米ツアーにチャレンジしたくなった場合は、予選会などで出場権を獲得しなければならず渡米へのハードルは上がる。「行きたくなった時に行きにくい」よりは、「行ける時に行く」方が得策だ。

 また、渋野は東京五輪出場を目標にしているが、そのためには現在12位につけている世界ランクを今の位置でキープしておく必要がある。今回のスインギング・スカーツLPGA台湾選手権でプレーするのも、世界ランクのポイントをできるだけ稼ぎたいから。もちろんそれなりの成績を収める必要はあるが、国内にいるよりも米ツアーの大会に出場する方が高ポイントを獲得できるのは明らかで、オリンピックの舞台に立つためにも米ツアーでの戦いは効果を持つ。

 そして何よりも渋野には、畑岡という参考にすべきライバルがいる。宮里藍という先人は米ツアーで戦い抜き世界ランクでトップに上り詰めたし、これまでにも宮里美香などがツアーVを手にしてきたが、同じく黄金世代の畑岡はツアー3年目ですでに3勝を記録。帰国すれば国内メジャーで他を圧倒する強さを発揮するプレーヤーになった。つまり渋野にもそうなる可能性は十分にあるということだ。

 慣れない海外での生活はメンタル的に大きな負担になる。近年の米ツアーは米国内だけでも大変なのにアジアでのトーナメントも増えており、移動だけ考えても肉体的な負担も相当なものだ。慣れた国内でゴルフに集中する方が良いという意見もあるだろう。

 しかし、渋野はまだ20歳。コース内外のことや米国での生活、言葉など様々なことを、スポンジのように吸収できる年代で味わった方が、ゴルファーとしてだけではなく一人の人間としても、大きく成長するはずだ。

 今後、渋野がどんな選択をするのか注目したい。