なお、紅葉の見ごろはおおむね11月中旬から12月上旬ごろ。保津川下りと合わせた周遊もおススメしたい(乗船場はトロッコ亀岡駅からバスで約15分。川下りは所要約1時間30分)。

■絶景と鉄道名所、そしてご当地グルメ。楽しみが満載の「奥出雲おろち号」

 おススメ紅葉探訪列車の3本目はちょっとエリアを変えて奥出雲へ。JR木次(きすき)線で運行されているトロッコ列車「奥出雲おろち号」も、人気を集める絶景紅葉列車だ。

 木次線は山陰本線の宍道(しんじ)と広島県の北東端に近い備後落合(びんごおちあい)とを結ぶ81.9キロの非電化ローカル線。古くは山陽と山陰とを結ぶ陰陽連絡線の一端をなしていたが、現在はわずかなローカル列車が命脈を保つにすぎない閑散路線と化して久しい。とりわけ出雲横田~備後落合間で運行されている定期列車は1日3往復に留まり、山深い中国山地を縫うように進むこともあって秘境路線ともいいうるロケーションとなっているのが特徴だ。

 島根・広島県境にまたがる区間では西日本屈指の豪雪地帯でもある三井野原(みいのはら)を辿り、三井野原駅はJR西日本最高地点駅(727メートル)を記録。車窓には二重ループ橋「奥出雲おろちループ」や高さ約100メートルに及ぶ三井野大橋の赤いアーチなどが現れるので、紅葉時期の展望はお見逃しなく。また、三段式スイッチバックを持つ出雲坂根駅や重厚な木造駅舎を持つ出雲横田駅などの鉄道名所にも恵まれ、鉄道ファンからの注目度が高い路線なのである。

「奥出雲おろち号」は木次線の観光列車として1998年4月にデビュー。オープンタイプのトロッコ車両をディーゼル機関車が引っ張る。冷暖房つき客車も連結されており、悪天候時などはこちらの車両に移動することもできるので、寒い日には重宝するはずだ。

 また、名物の「亀嵩(かめだけ)駅そば弁当」や「トロッコそば弁当」、「スーパープレミアムアイスクリーム」など沿線の味覚も味わいたい(販売駅または車内などで販売。一部予約可能)。

 通常は4~11月の金・土・日曜・祝日の運行で、紅葉期間にあたる2019年11月24日までは毎日1往復が運転される。木次~備後落合間が通常の運転区間だが、11月24日までの日曜・祝日と11月23日(土)は出雲市~木次間で延長運転を実施(備後落合行き片道のみ)。乗車には乗車券のほか指定券が必要で、指定券は乗車日1カ月前からJRのみどりの窓口や旅行代理店などで購入できる。

○植村誠(うえむら・まこと)/国内外を問わず、鉄道をはじめのりものを楽しむ旅をテーマに取材・執筆中。近年は東南アジアを重点的に散策している。主な著書に『ワンテーマ指さし会話 韓国×鉄道』(情報センター出版局)、『ボートで東京湾を遊びつくす!』(情報センター出版局・共著)、『絶対この季節に乗りたい鉄道の旅』(東京書籍・共著)など。