彼らとは長いつきあいになる。多くが元難民だった。いや、難民というのは語弊がある。

 日本は難民にとっては厳しい国だ。正式に難民として受け入れられたのはごくわずかにすぎない。しかし日本に観光ビザなどで入国し、ビザが切れた時点で難民申請する人がいる。申請を受け、入国管理局は難民として受理できるかを審査する。その間、入国管理局内の施設に入ることになるが、多くが人道的な見地から猶予され、「仮放免」という形で日本に滞在することが許される。しかも、その期間は働くこともできる。さまざまな制限がある観光や留学ビザよりもはるかに自由なのだ。「仮放免」中の彼らが、パキスタンで会ったアフガニスタン人の姿と重なった。

 それから10年以上の年月が経った。その間、彼らは寿司屋で働き、腕をあげた。いまは正式な在留資格も得た。そして力を合わせ、寿司屋をオープンさせた。彼らが握った寿司を食べる。自由という味がする。

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下川裕治

下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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