そもそもこの調査は、ベビーフードの不適切な表示や広告をなくし、乳幼児の健康的な食事を推進するためのプロジェクトの一環として行われたものです。つまり消費者向けの調査ではないのですが、この調査結果は、日常で私たちが乳幼児向けの食品を選ぶ場面で活用することができます。その際には、ひとつの食品の中で糖類がカロリーのどの程度の割合を占めているかという数字を気にするよりも、どんな食品を摂るかを選ぶことが大切です。

 ベビーフードは、衛生的で手軽に使え、鉄分など手作りの食事で補いにくい栄養素を摂りやすいというメリットがあります。ベビーフードを一律に避けるのではなく、上手に選んで活用していただきたいのです。

 ママ・パパに注目していただきたいのは、調理や加工過程で加えられる、砂糖やシロップ類、果汁です。私は以前、息子のために買ったベビーフードを何度か味見しました。日本のベビーフードがものすごく甘すぎると思ったことはありませんが、ほんのり甘みがあるものが多く、「これが赤ちゃんの好きな味なのか」と感心したのを覚えています。原材料表示を見てみると、赤ちゃんボーロ、クッキー、ウエハースには砂糖が含まれているものが多く、またおやつではなく食事として与えるためのベビーフードでも、甘じょっぱい和食系の味付けのものには、砂糖が入っていることがあるようです。一方で、友人にお土産でいただいたドイツの子ども用スナックは、全く砂糖も塩も入っておらず、素朴な味わいでした。

 ホームページを見て調べた限り、日本のベビーフードで砂糖の添加量が記載されているものは見つけられませんでしたが、砂糖やシロップなどが入っているかどうかは、原材料表示を見ればわかります。WHOは報告書の中で、乳幼児の食べ物に砂糖やシロップ、果汁を加えるのは適切ではないと明記しています。欧州地域事務局では、3歳までの子ども向けの食品としてはフルーツジュースや甘いスナックを販売させず、ベビーフードに砂糖やシロップ、果汁を加えるのを禁止する方向で動いているようです。この方針に沿うならば、おやつはジュースや甘いクッキーよりも、砂糖の含まれていないおせんべいがより良いかもしれません。メーカーによっては、砂糖不使用のボーロなどを販売しているところもあります。また、食事としてベビーフードを与える際にも、砂糖が入っていないものを選ぶことができます。

 わが家の息子も甘いものが大好きなので、健康には良くないでしょうが、菓子パンを食べさせることもあります。糖類はあまり健康に良くないですよと言うと、それを気にしすぎて追い詰められてしまう方もいらっしゃるのですが、ストレスをためないことも大切です。余裕がある時に、ベビーフードの裏面の原材料表示も確認してみる、どちらを買っても良いと思ったら砂糖が入っていないベビーフードを選ぶ、くらいの気持ちで、少しずつ取り入れていっていただけたらと思います。

(※1)WHO. Commercial foods for infants and young children in the WHO European Region (2019) [Available from: http://www.euro.who.int/en/health-topics/disease-prevention/nutrition/publications/2019/commercial-foods-for-infants-and-young-children-in-the-who-european-region-2019.

○森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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