日本はすでに多くの外国人が定住し、移民大国であると指摘されることも多い。だが、労働者としての側面ばかりがクローズアップされ、子ども、中でも義務教育ではない高校生について語られることはあまりない。現実には、外国にルーツを持つ生徒の少なくない数が「教育困難校」に通学する。彼らの実態と抱える問題とは。朝日新書『ルポ 教育困難校』より一部掲載する。
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■急増する「外国にルーツを持つ生徒」
外国にルーツを持つ人たちのスポーツや芸能の世界での活躍は近年著しい。彼らの平均的な日本人とは異なる外見や身体能力や複数の言語を使いこなす能力がグローバル化の時代にマッチするのだろう。
その一方で、同様の出自を持ちながら日本で生活する能力やスキルを、高校生になるまでに十分に身に付けることができなかった生徒が「教育困難校」には多数存在する。
このような存在の増加には文部科学省も着目し、従来から行っていた「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」を2012年から2年ごとに実施するようになった。
2017年6月に発表された最新の調査結果(図)によると、2016年5月1日現在、全国の小中高に在籍している日本語指導が必要な外国籍の児童生徒は3万4335名(前回比5137名増)、日本国籍の児童生徒が9612名(前回比1715名増)である。この内、高校の在籍数は外国籍2915名、日本国籍457名となっている。これら児童・生徒の通常使用している言語を見てみると、ブラジルの主要言語であるポルトガル語が25.6%で第1位、中国語が23.9%、フィリピン語が18.3%と続いている。
また、地域別の在籍数を見てみると、日本語指導の必要な児童・生徒の数は予想通り地
域差が大きく、在籍数が多いのは愛知県(7277名)、神奈川県(3947名)、東京都(2932名)となっている。
■外国人児童が約26%の学校も
ポルトガル語を通常使用する子どもが多いのは、1990年の出入国管理法の改正が影響している。この改正で日系人は三世まで日本国内でどんな仕事にも就労できる定住ビザが発給されるようになり、日系人が多いブラジルなどからの受け入れが急速に進み、自動車や家電の製造には欠かせない労働力となった。