それを象徴するのが、2010年南アフリカワールドカップ直後から4年間指揮を執ったアルベルト・ザッケローニ監督時代だ。イタリアきっての戦術家として知られた同指揮官は就任当初から3バック導入意思を鮮明にしていたが、日本代表が長くベースにしてきたのが4バックだったこともあって、チャレンジに二の足を踏んでいた。

 今回の森保ジャパン同様、2011年アジアカップ(カタール)後の同年6月のペルー(新潟)・チェコ(横浜)2連戦でテスト的に試みたものの、3カ月後の9月からスタートした2014年ブラジルワールドカップアジア3次予選で本田圭佑を負傷で欠き、苦戦を強いられる中、戦術に幅を持たせる余裕がなくなった。「結局、時間切れになったので断念した」とザッケローニ監督も後に振り返った通り、十分なトレーニング時間を持てない状況下での習熟というのは、やはり簡単なことではないのだ。

 当時を知る長友は「正直、3バックにいいイメージがなかった」と本音を吐露する。「ザッケローニさんの時もやりましたけど、代表でうまく機能したことはあんまりないんじゃないですか。結局、全然はまんなくて、自分自身も混乱していた。その経験を踏まえて今回はもっと難しい試合になると思っていた」と警戒心を募らせていたという。

 トリニダード・トバゴ戦は相手との力関係もあり、日本が一方的に押し込めたことから、大きな混乱はなく、守備面も2、3回のカウンターを繰り出される程度で済んだが、勝負のかかった公式戦は相手の迫力も試合のインテンシティーも確実に上がる。この日キャプテンマークを巻いた柴崎岳も試合後のフラッシュインタビューで「(相手の)強度が低かったので何とも言えない」と発言していた。その言葉通り、今回の手応えをうのみにしていたら足元をすくわれかねない。いかにして約束事を徹底させ、意思統一を図っていくのか。ディテールを詰め、完成形に近づけていくために、森保監督はザッケローニ監督同様、時間との戦いを強いられそうだ。

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日本代表の選手たちに果たして併用は可能なのか?