そして優秀だった彼が、突然業務を投げ出すなどの「折れる」という状態になってしまうのだ。

 これまで優秀で通ってきた人が、昇進したり、新しい仕事に異動になったとき、同じようなことが起こりやすい。これまで自分はやれてきたという自信が、「疲労」を適切に感じることを妨げ、あるとき、突然に折れてしまうのだ。

■人は疲れるという当たり前のことを意識する

 軍隊では、「人は疲れる」ということを常に意識するように訓練する。ちょうど長距離ランナーが、まだのどが渇いていなくても、定期的に水分を補給することを訓練するのと同じだ。

 まず、軍隊では、「睡眠」と「水分」をとることを強調している。どちらも緊張しているとつい忘れてしまうことだ。

 強制的に8時間睡眠と6時間睡眠をさせるグループを作り2週間後に比較したところ、6時間睡眠グループでは、酩酊と同じぐらいの能力の低下が観測された。米軍などでは、任務中でも少しでも余裕があるときは、交代で積極的に昼寝をすることを推奨している。

 ストレス解消の一つに、「楽しいこと」をするという手段を持っている人は多いと思う。ゲームや酒、スポーツなどが多い。ただ、結果的にそれが睡眠不足につながっているとしたら、そのストレス解消法は、高レベルストレスには通用しない方法だということを知っておかなければならないだろう。

 ところが中レベルのストレス状態までに、よく使っていたストレス解消法を、高レベルのストレス状態で急に手放すというのはかなり難しい作業だ。そこで、日ごろから「睡眠を意識した生活様式」を訓練しておくことをお勧めしたい。

 質の高い睡眠のためには、夕方に軽い運動をする、入浴して体を温める、寝る前に明るい液晶画面を見ないなどの方法が知られている。自分に合うものを取り入れてみてほしい。