──実力を出して結果を残すことの重要性。

 18年7月31日、横浜相手に1418日ぶりの完封勝利を飾った試合のことだった。6回表、5点リードで内海に打席は回った。勝ち投手の権利は手にしている。長いシーズンを考えれば、代打もしくは戦略上の三振もありえた。だがこの打席で内海はセンター前ヒットを放った。

 結果は塁上に残塁で終わった。しかし「5点ではダメだ。勝つためにはなんでもする」 、そういう姿勢が伝わる打席だった。勝ちにこだわる姿勢こそ、内海の真骨頂である。

 どのスポーツでも見る人の主観によって感じ方が変わる。贔屓チームが勝ってもつまらなく感じる時もある。逆に負けても心を掴まれるシーンもある。見ている側はそれでいいが、やっている選手はそうもいかない。プロであり、常に結果が求められる。「全力で頑張りましたがダメでした」では通用しない。特に年齢を重ねた選手にとってすべての一瞬が勝負、結果が伴わなければ明日がなくなる可能性もある。

 人格や気持ちを出すだけでなく、実力をみせ、結果を残さなければならないことを、内海本人が誰よりも自覚しているはず。

 勝てるか、勝てないか。

 内海哲也の勝負のシーズンが始まろうとしている。(文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍やホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を不定期に更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。