男子学生の自宅から押収された3Dプリンター。プラスチック製の拳銃を自作したとみられている (c)朝日新聞社
男子学生の自宅から押収された3Dプリンター。プラスチック製の拳銃を自作したとみられている (c)朝日新聞社
元大学生がつくったものと思われる動画のスクリーンショット
元大学生がつくったものと思われる動画のスクリーンショット
元大学生が投稿したと思われるツイッター(画像を一部加工しています)
元大学生が投稿したと思われるツイッター(画像を一部加工しています)

 テロに使われる爆薬「TATP(過酸化アセトン)」や拳銃、覚せい剤を製造したとして、爆発物取締罰則違反や武器等製造法違反などの罪に問われた元大学生(19)の初公判が21日、名古屋地裁で行われた。

【元大学生がつくったものと思われる動画のスクリーンショット】

 元大学生はすべての起訴内容に対し、「その通りです」と認めた。

 元大学生は爆薬を製造し、公園で火薬を燃やしたなど爆発物取締罰則違反の疑いで昨年、愛知県警に逮捕されていた。

 さらに3Dプリンターで製造したとみられる拳銃や自作の覚せい剤を所持した容疑でも逮捕された。

 当初、元大学生は家庭裁判所に送致されたが「非行内容があまりに重大。検察官送致が相当」となり、刑事裁判で裁かれることになった。

 法廷で検事が証拠として示したのが、ビニール袋に入った黒く光る拳銃だ。

 長さ30cm弱、手のひらより少し大きい。

「あなたのものですね」

 検事が元大学生に尋ねると、「はい」と答えた。

 そして「もういらないですね」と続けると、元大学生はうなずいた。

 続いて、法廷には元大学生の自宅から押収した三角フラスコに入っていたという、黄色っぽい溶液が登場。

 覚せい剤成分を含んでいるもので生成して覚せい剤を密造しようとしていた、という。自身の自宅の部屋にあったものと元大学生は認めた。

 身長170cmほどで、細身で色白な元大学生は、どこにでもいそうな少年だった。

 それがなぜ、拳銃、爆薬、覚せい剤と次々に密造できたのか。

 事件が発覚したのは、昨年3月19日夜に名古屋市名東区の公園で当然、ドーンという爆発音が鳴り響き、119番通報されたこと。

 調べたところ、何かが爆発した形跡があった。翌月には捜査で元大学生がTATPを密造して、威力を試すために爆発させたことがわかった。

 そこで、愛知県警が元大学生の自宅へ捜索に入るとTATPと一緒に四硝酸エリスリトール(ETN)なども発見された。

「TATPは2015年のパリのISによるテロなどで使用され、強い殺傷能力から“悪魔の母”とも呼ばれている。ETNはより威力が強いとされる。元大学生は、高校時代に科学関連の部活をしていて、2017年ころから、その学校からTATPやETNの元になる物質を持ち出して密造していたそうだ。高校時代から、爆発物が意外に簡単に作れるとハマって密造し始めたと動機を語っている。それが次第にエスカートして、インターネットで情報を集め、覚せい剤やけん銃まで密造してしまったようだ」(捜査関係者)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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