笑顔で抱き合う広島の新井(左)と菊池 (c)朝日新聞社
笑顔で抱き合う広島の新井(左)と菊池 (c)朝日新聞社

 2018年もさまざまな出来事があったプロ野球。華々しいニュースの陰でクスッと笑えるニュースもたくさんあった。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2018年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は球場中を爆笑の渦に包み込んだ「エンターテイナー」をピックアップ。

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 今季限りで20年間の現役生活に別れを告げた広島・新井貴浩が、ラストイヤーを飾るにふさわしい“横綱級”の珍プレーを披露したのが、6月1日のロッテ戦(ZOZOマリン)。

 広島が6対4とリードして迎えた8回の守り。2死から代打・福浦和也が一塁線に強いゴロを放つ。打球は通算2000本安打を目指す福浦の執念が乗り移ったかのように、一塁ベースに当たり、ポーンと高く跳ね上がった。

 だが、ファースト・新井は慌てず騒がず、拝むような態勢でボールをガッチリ掴むと、そのまま一塁ベースに駆け込む。タイミング的には余裕でアウトと思われたが、橋本信治一塁塁審の判定はなぜか「セーフ!」。

 これには、日頃温厚な新井も「何でやねん?」と口をとがらせて詰め寄り、マウンドから一塁ベースカバーに入ろうとしたジャクソンも「そりゃないよ!」と言わんばかりに抗議。もちろん、緒方孝市監督もリクエストを要求した。

 ところが、リプレー検証すると、新井の足は一塁ベースをまたぎ越しており、完全な踏み忘れ。映像を見ていたカープナインはもとより、スタンドのファンも大爆笑だった。

 いかにも“新井さん”らしいチョンボと思われたが、ここで「まさか!」のどんでん返しが起きる。リプレー検証の結果、判定がアウトに覆ったのだ。

「何でそうなるの?」と首を捻りつつ、映像をもう一度よく見ると、な、なんと、新井の捻った左足首の部分がベースに接触していたのだ……。まさに“珍プレーの帝王”の面目躍如で、スリーアウトチェンジ!

 あれほど笑い転げたチームメイトたちもコロリと態度を変え、ベンチに引き揚げて来る41歳のベテランを「ナイスプレー!」と拍手喝采で出迎えたのだった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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「本当に当たったんだよ!」