翁長・前知事のキャッチフレーズは「イデオロギーよりアイデンティティー」。もちろん、若者たちもそのことを意識していた。

 街を歩きながら投票を訴える時は、沖縄のお盆の伝統行事である「道ジュネー」に見立て、エイサーをやっているかのような雰囲気にした。それも「沖縄人のアイデンティティーが目覚めたら、この選挙は勝てる」(選対関係者)と計算していたからだという。

 そして9月22日に那覇市で開いた集会では、翁長・前知事の妻、樹子(みきこ)さんが参加。目に涙を浮かべながらマイクを握って「政府の権力をすべて行使して、まるで愚弄するように私たち沖縄県民を押しつぶそうとしている」と訴えた。この動画は、10万回以上再生された。

 ネット選挙や若者たちの奮闘が実際の投票にどの程度影響を与えたのか。その測定は難しいが、出口調査ではある傾向が出ていた。

 沖縄タイムス・琉球朝日放送・朝日新聞の共同出口調査によると、10代、20代では拮抗し、30代以上の世代はすべて玉城氏が上回った。さらに、無党派層では70%、女性票は61%といずれも玉城氏が圧倒した。

 また、玉城氏は野党支持層を9割固めたのに対し、佐喜眞氏は自民支持層が8割、公明支持層は7割程度しかまとめきれなかった。選挙戦の最中に行われた自民党総裁選では、沖縄県の自民党員の62%は安倍首相に投票した(全国平均は55%)。ところが、投票率は全国最低の38.9%で、全国平均を22.8ポイントも下回っていた。

 公明党も組織をまとめきれなかった。沖縄県の政界関係者は「創価学会票でまとまったのは6割、ひょっとしたら5割程度ではないか」と見ている。公明党の支持率は全国では3~4%で推移しているが、今回のNHKの出口調査では2%しかなかった。玉城氏に投票するだけではなく、投票を棄権した、あるいは公明党の支持すらやめた人が相当数いた可能性もある。

 近年の傾向で、国政の野党は60代以上では得票率が高いが、年齢が若くなるごとに自民・公明の候補が強い。今年2月の名護市長選、6月の新潟県知事選も同じで、野党候補は重要選挙で連敗した。それが今回は若い世代の票を得て勝利したことで「今後のモデルになる」(立憲民主党議員)と評価されている。

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