ASKAの上半身はTシャツがはちきれそうなほど大胸筋がパンパンに張っていた。少し陽焼けした頬はシャープで健康的だ。
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「剣道を再開して、8月に4段に受かりました。高校生のときに3段になって以来です」
この日もインタビュー後に道場へ行くという。2014年に覚醒剤所持で逮捕(執行猶予)されて以来再起不能報道もあった。しかし、毎日作詞作曲を続け、スタジオに入り、その合間に時間を見つけて剣道の稽古を続けている。
「週刊誌では、ひと言も喋れなくなっている、再起不能という記事も出たりしましたが、そんなことはありません。こうやって、ふつうに話していますからね。そういう記事が出てしまったのは仕方がないことだとも理解していますが、これからは音楽をつくり続けている姿、そしてステージに立ち歌い続ける姿を見せていかなくてはいけない。そういった姿が何よりの説得材料にもなります。僕のように間違いを犯してしまった人はたくさんいます。そういう人たちが社会復帰しやすく、そして受け入れてもらえる社会になるようにすることが僕の使命だと思っています」
一度は引退を考えたというASKA。しかし、周りのミュージシャン仲間の言葉により、再スタートを決めたという。
「このまま頭を下げて生きていくのか?」
自分に問いかけ、非難を受けても前を向いて音楽をつくり続ける道を選んだのだ。
「僕は実はほとんど苦労をせずに音楽をやってきました。デビューしてすぐに曲がヒットチャートに入った。ライヴの本数は増え、会場は大きくなり、陽の当たる場所を歩いてきました。もちろん、短い停滞期はありましたよ。でも、それは階段の踊り場のようなもので、苦労といえるほどではありません。事件が初めての試練でした。やってはいけない大きいことでしたけれど、音楽はやめないと判断したんです」
再び音楽と向き合うと、次々と曲が生まれてきた。
「アルバム『Too many people』の『通り雨』は15分くらいでできました。アドリブを演奏していたらできてしまった」
「通り雨」は跳ねるようなシンセサイザーに透き通るようなASKAのヴォーカルが乗り、アコースティックギターが寄り添う、週末の朝に聴きたくなるようなさわやかなナンバー。