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日本の財政を救う2本の『魔法の杖』とは?

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右から小野善康特任教授(大阪大学社会経済研究所)、原真人編集委員(朝日新聞社)、小島寛之教授(帝京大学経済学部)(提供:大阪大学社会経済研究所)

右から小野善康特任教授(大阪大学社会経済研究所)、原真人編集委員(朝日新聞社)、小島寛之教授(帝京大学経済学部)(提供:大阪大学社会経済研究所)

 日本のようにモノが十分に行き渡った成熟社会においては、人々はモノよりお金を持つことを好むようになり、使い切れないほどお金が増えてもなお貯め続けようとする。このような心理的前提がある限り、政府がいくら国債を発行し、日銀がいくら通貨を発行しても、それはすべて個人の金融資産に吸収され、市場には一定以上のマネーは放出されないことになる。

 小野教授は、

「日銀の異次元緩和政策と似ていて、かつ同じぐらい重要な問題が政府の財政赤字」

「今の累積赤字に対して、『別にどんどん増えていってもいい。財政が破綻すればそのときに累積赤字が解消するのだから、そこで調節すれば済む』と言う研究者もいる。研究の上ではそうしたシナリオが理論的にきれいに説明されている。しかしその破綻によって国民生活はどうなるのか。私もそろそろリタイアする年齢で、これから先、今持っている資産で何とか余生を暮らそうというときに(財政破綻によってハイパーインフレになって資産の価値が激減し、社会保障制度も崩壊してしまったら)、『俺の生活はどうなるんだ』という気持ちになった」

 と心情を吐露した。

 小島教授は幕末に米の価格が10倍に跳ね上がったエピソードを紹介。それは「幕府が長州と戦って負け、もう幕府の貨幣の価値がなくなる」と人々が考えたためだったが、このとき価格が上がったのはコメだけで、他の物品の価格は変わらなかったという。

 これは幕府の権威が崩壊したことで、その発行する小判ももはや通貨ではなくただの金属となり、代わって米が貨幣の代役を担ったことを意味し、小島教授は、

「これは小野さん流に言うと、『貨幣が別のものに憑依した』状態です」

 と表現。

「貨幣がまだ貨幣であればいい(金融引き締めでインフレを押さえられる)けれども、(政府と中央銀行から通貨発行主体としての信頼が失われ)紙くずになってしまっていたらもうコントロールは効かなくなる」

 と現在の放漫財政を批判した。

 原編集委員は財政問題について、

「財務省の方たちは(政府の財政状況に対して)大変な危機感を持っていると思う。ところが財務省は官邸から非常に疎まれており、今の安倍政権に対してはなかなかもの言えぬ雰囲気がある」

 と政治の問題を挙げた。

 小野教授も、2010年に、当時の菅直人総理が参院選での選挙演説で「消費増税も視野に入れる」と発言、大敗してしまった経緯を明かし、

「私の理解では、財政を救う『魔法の杖』には2種類あります。一つはいくら政府が国債を発行し、いくら日銀がお金発行しても、我々が『お金には価値があるのだ、ありがたい紙なのだ』と信じ続けること。日本は需要が足りないので、本当はもっと使ってくれれば景気もよくなるのですが、使わないでお金を握りしめながら、『うれしいなうれしいな、お金がこんなにあるな』という状態を続けることです。

 もう一つは、政府の財政赤字はそもそも我々国民が政府に対して1万円のものに対して5000円しか払っていないことが原因なのですから、『お金の信用を維持するために、もう5000円の税金を払いましょう』ということですね」

 と増税への理解を求めた。

 討論の最後、「今の状況はさながら日本国民全員がお金という名の神を信仰する、一種の新興宗教にはまり込んでいるような状態」という小野教授の指摘が印象的なディスカッションとなった。


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