今回の沖縄県知事選でも同様の懸念がある。翁長前知事は元々自民党県連の幹事長を務めるなど、沖縄の保守本流だった。その保守の重鎮が、リベラル派とタッグを組んでまとめ上げたのが「オール沖縄」である。つまり、その支持層にはかなりの保守層がいる。右から左まで幅広い支持層に支えられているのだ。

 玉城氏は自由党に所属していて、本人は、「保守」を自任している。DJ出身ということで、「左翼」というイメージは薄い。翁長氏が後継指名したとされるが、その理由は、保守層にも食い込めるのではないかという期待があったからかもしれない。

 しかし、最近の「自由党」の主張は、共産党にもかなり近く、庶民の間では、必ずしも「保守」というイメージが強い訳ではない。玉城氏のブログやSNSのサイトを見ても、安倍批判やリベラル的な主張は目立つが、「保守」をイメージさせる内容はほとんど見当たらない。翁長氏が、何も言わなくても、「保守」であることがわかったのに比べれば、保守層に食い込むという意味での力は弱いと言わざるを得ない。

 一方、佐喜真氏は、今後、基地問題の争点化を避け、バラマキに加えて、リベラル的な社会保障政策、そして、中間層にも受けが良い経済振興策を強調する選挙戦を展開すると思われる。そうなると、佐喜真氏がかなりの程度中間層を取り込み、さらにはリベラル層にまでその触手を伸ばしてくる可能性もある。

 そこで、玉城氏が取るべき戦略として重要になるのが、中間層から保守層に食い込むイメージ戦略だ。リベラル派のことははっきり言って忘れても良い。彼らはどちらにしても玉城氏に投票するしかないからである。冷淡な言い方に聞こえるかもしれないが、それくらい「冷静」にならなければ、選挙には勝てない。バラマキや経済振興策は、どうしても与党側の方が実現可能性があるのではないかということで、野党側が唱えてもなかなか浸透しないのが現実だ。特に基地をなくして経済振興をという時には、その実現性が大きな争点になる。

次のページ
沖縄県知事選でカギを握る人