そこで、外出先から帰社した15分間と、朝の外出前の15分間は電話連絡に集中するための時間と定め、「15(イチゴ)運動」として定着させていった。

■eメールに没頭することで仕事をした気になる心理

 さらに、こうしたルールを徹底させるため、全社員に向けて「eメール研修」を実施。3分間の電話のやりとりを、eメールに書き起こさせ、口頭とタイピングでのスピードの違いを体感してもらうところからはじめ、実際に社内で交わされたeメールを添削しあうグループワークを行った。そして最後に、対人接触を避けるために、ついeメールをする心理や、eメールに没頭すると「仕事をした気になってしまう」心理などを説明した。

■仕事の取組みを少し変えるだけで効果あがるホントの働き方改革

 研修終了後、6カ月を経て社員30人の効果測定を行った。管理職・一般のトータルで、eメールの作業時間は以前143分/日だったのが、84分と、59分/日も削減。月間では、電話に費やす時間が増えた分を差し引いても、1人当たり13.7時間の削減効果があった。これを全社300人分の労働時間に換算すると、年間で4万9320時間となる。コスト換算で1憶2840万円と算出された。各務さんは、こう締めくくった。

「仕事への取組み方をほんの少し変えただけでこれだけの効果があり、本当の意味での『働き方改革』と言えるのではないだろうか」

各務晶久(かがみ・あきひさ)
1969年生まれ。経営・人事コンサルタント。(株)グローディア代表取締役、特定非営利活動法人人事コンサルタント協会理事長。川崎重工、日本総合研究所を経て独立。同志社大学卒、関西学院大大学院で経営学修士(MBA)取得。中小企業診断士。大阪市人事に関する専門委員、大阪市特別参与、大阪商業大学大学院非常勤講師などを歴任。著書に『人材採用・人事評価の教科書』(同友館)