社員の業務時間内訳
社員の業務時間内訳

管理職の上司1人に対して、複数の部下からの報告や相談のメールが集中する
管理職の上司1人に対して、複数の部下からの報告や相談のメールが集中する

 ある中堅企業で、年間1憶2840万円もの歳出カットをアドバイスし、成功させた男がいる。経営・人事コンサルタントの各務晶久さんだ。各務さんが著書『メールに使われる上司、エクセルで潰れる部下 利益生むホントの働き方改革』で明かした、驚くほど簡単な方法とは?

【管理職が在社時間の3分の1をメールに費やす理由】

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■管理職は在社時間の3分の1をeメールに費やしていた

 各務さんが「働き方改革」についてコンサルティングを依頼されたのは、年商約240億円、社員数約300人の通信ネットワーク企業だった。各務さんはまず、社員の業務時間をモニタリングした。すると、社内業務でもっとも時間を割いていたのが、eメールであることがわかった。

 eメールに費やしている時間を計算したところ、社員全体で143分、管理職では165分、管理職では実に在社時間の3分の1という結果となった。管理職の上司1人に対して、複数の部下からの報告や相談のメールが集中するため、処理する本数は多い。しかし、部下から雑な対応をする上司と思われたくない心理が働くのか「部下の些(さ)末な報告にまで丁寧に返信し、ねぎらいの言葉まで添えていた」という人までいた。

■eメールは「挨拶禁止」「用件のみ」のシンプルで

 そこで、社内eメールで挨拶を書かないのは失礼には当たらず、むしろそれがマナーであり、社内連絡にムダな文章を書くのは経営資源を浪費していることだという意識を、会社全体に浸透させるよう務めた。まず、eメールでの「挨拶禁止」「用件のみをシンプルに伝える」というルールを決め、会社全体で年間6120時間もの作業時間を短縮した。

 さらに、社員の行動を分析。生産性の高い社員は、外出先から帰るとすぐに社外に電話連絡を入れていた。一方、要領の悪い社員は帰社直後の行動に一貫性がなく、場当たり的な仕事の仕方で貴重な時間を他の業務に費やしていた。しかも、気がつけば相手先の業務終了時間を過ぎ、電話で済むような簡単な用件も、結局はeメールで連絡せざるを得なくなるなど、時間的ロスが多いことがわかった。

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