さらに球団は行政との連携を深めるため、横浜市と包括連携協定『I☆YOKOHAMA協定』を締結。若手選手寮で親しまれている“青星寮カレー”を学校給食に提供し、20万人の子どもたちに楽しんでもらったり、また『やきゅうみらいアクション』という催しではチームの選手やOBが学校に訪れ野球振興活動を行っている。

 そこには単に集客、ファン拡大ばかりを目的とするわけではなく、DeNAがスポーツ事業で培ったリソースを横浜市や行政機関、企業と共有することで、横浜という街や社会を豊かにするという狙いがある。

 横浜市の人口は約374万人。多くの可能性がある地域である。岡村社長によれば、DeNAは『横浜スポーツタウン構想』を通じ、地域の多くの人たちに愛される球団を目指すとともに、ひいては、かつて鉄道会社がそうだったように、娯楽施設や住宅、商店など一体化した都市空間を創造することも視野に入れているという。

 実現するか否かは別として、このような球団経営の枠組みから躊躇なく踏み出せる発想力と行動力こそがDeNAの経営におけるストロングポイントだといえる。

 8月10~12日の阪神タイガース戦では『勝祭 2018』というイベントが行われる。特に注目したいのは、11日と12日に行われる球団として初めて近隣の日本大踊りを一時通行止め(10:00~17:30)にして開催する『VICTORY☆STREET』だ。チームの勝利への機運を高めるトークショーやパフォーマンスなどを行う予定だが、公道を通行止めにしてしまう大胆さはもちろん、これこそ行政の協力なくして実現不可能な催しである。

 現在のDeNAという球団をリアルに感じられるイベントだけに、興味のある人はぜひ足を運んでほしい。(文・石塚隆)

●プロフィール
石塚隆
1972年、神奈川県生まれ。スポーツを中心に幅広い分野で活動するフリーランスライター。『週刊プレイボーイ』『Spoltiva』『Number』『ベースボールサミット』などに寄稿している。