実は、東京大学や慶應義塾大学など8つの大学が、JSECをAO入試および推薦・特別選抜入試の対象コンテストとしている。今春も東京大学推薦入試で1名工学部に進んでおり、早稲田大学、お茶の水女子大学、ICUなど有名大学への進学は、自己推薦も含めるとかなりの数になってきている。2020年の大学入試改革の影響で、一般入試がどんどん難しくなっている半面、全国の大学が秀でた能力を評価する動きは加速している。今年から神戸大学の「志」入試でJSECが評価項目に加わる。

 理系の突出した人材を受け入れる動きは国立大学が熱心だ。私立大学はホンネでは、基礎学習の3年生まで一般入試組と机を並べるので、学力的についてこられるか心配している。他の私大がどう動くか様子見しているとのこと(複数の大学関係者)。どうも情けない状況だ。

 昨今「数学オリンピック」などオリンピック系が推薦入試に有利で、対策も中高一貫の進学校なら有利と考える高校生は多い。決して悪いことではないが、地道にこつこつ研究や観察を続ける自由研究こそ、次代の日本や世界の問題解決につながり、大学も間違いなく求めている。実際、今年のISEFに、米国に次いで選手を送り込んできたのは韓国の47名。中国・台湾勢も増えている。将来ノーベル賞を獲るような若者が日本で枯渇しないよう、科学の自由研究を盛り上げていく必要がある。

(文/安井克行・朝日新聞社教育総合本部ディレクター JSEC事務局長)