本人はアルコール依存症を否定し、メンバーの松岡昌宏も「最初は依存症だと思っていたが、病院に行ってもその診断は出なかった」と話していたが、肝臓を休めるための入院生活が開けた日に焼酎をひと瓶飲んだという事実を考えると、酒との結びつきは強いと言わざるを得ない。

もちろん、状況も、やったことの内容も違うが、酒に酔った上でのトラブルから見事に立ち直った例として個人的に真っ先に思いつくのが漫才コンビ「中川家」の礼二だ。

 2003年、酩酊した礼二が女性の頭をたたくなどしたということで謝罪会見も行ったが、僕も実際に目の当たりにしたこともあるが、事件以前の礼二の飲み方はかなり激しかった。

 ある一定のラインを超えると急に目がすわってきて、それまで実にポップな飲み方をしていたのが一変する。説教モードに入ることも多く、その店全体の空気が一瞬で変わるほど後輩を厳しい口調で叱責する場面も見た。

 同期の芸人を中心に、礼二の飲み方を注意する動きは多々あったが、それが一変し「こんなに良い形になることもあるんやな」と芸人仲間が驚いたのが、09年にピアノ講師だった奥さんと結婚したタイミングだった。

 結婚後も礼二家族と宴席を共にしたことがあるが、酒を飲む場には可能な限り奥さんが付き添い、これ以上飲んだら好ましくないというラインを絶妙に見極めて酒量をコントロールしていた。実際、その飲み方が礼二に定着し、酒の席での振る舞いがまるで変わったと言われるようになった。

 また、09年に大阪市内のガールズバーで男性店長を殴ってけがを負わせたとして傷害容疑で逮捕され、起訴猶予処分となった漫才コンビ「メッセンジャー」黒田有。それまでも礼二とともに酒の飲み方の激しさを指摘されてもいたが、芸人の世界ならでは縦横のつながりで常にあらゆるメンバーが黒田の細かい変化を察知し、ブレーキ役になることで良い状態を保っている。

 黒田の相方・あいはらとは、05年からデイリースポーツの記者として僕が出演した読売テレビ「なるトモ!」共演をきっかけに公私ともに付き合いが非常に深いが、09年12月26日の未明、黒田が逮捕された直後に僕の携帯電話が立て続けに2回鳴った。あいはらからの着信だった。当時も僕はデイリーの芸能担当記者をしていたが、その日の夜はあいはら宅のリビングにあるこたつで、あいはら、奥さん、あいはらの幼馴染、そして僕の4人で鍋を囲みながらあらゆる話をした。

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