“酒どころ”の高知。駒田監督と、杯を酌み交わしたい。それもファン気質だろう。指揮官は返杯も一切断らず、豪快に飲み干していく。それがまた、ファンにはたまらない。

 駒田監督は、70年代、80年代の歌謡曲のマニアでもあり、店の棚には、酒のボトルとともに、自宅からわざわざ運んできたCDが数百枚、ぎっしりと積まれている。

「これでも、厳選してきたんだよ」

 そのコレクションからお気に入りの曲を選び、自ら、プレーヤーにかけて流し、時に口ずさむ。

 店内には、現役時代の名シーンの写真パネルや自らのユニホームなど、お宝グッズもずらり。2015年に高知でプレーした藤川球児(現阪神)や、昨季プレーしたマニー・ラミレス(元レッドソックス)に、高知で10年間プレーし、その背番号1が永久欠番となっている梶田球団社長のユニホームもつるされている。

 もちろん、野球談議もありだ。試合中の裏話はもちろん、現役時代の裏話。「まあ、ここだからいいか」と前置きして話してくれる逸話は、目を見開くようなものばかり。

 野球ファンの“聖地”のような場所でもあるのだ。バーは、球団が賃貸料を払っている。

 だから、れっきとした球団の一事業でもある。居抜きだったこともあり、トイレを和式から洋式に改造した程度で、開店資金には「100万円もかかっていない」と梶田球団社長はいう。ヨーロッパのパブのような、アンティークな雰囲気に「ちょっと良すぎるよ」と駒田監督も、物件を初めてみたときに驚いたほどだった。

 帯屋町といえば、官公庁、高知城、はりまや橋に、高知の英雄・坂本龍馬にまつわる博物館や資料館からもほど近い。そうした目抜き通りですら、このように空き物件が増えている。それが、地方経済の現実でもある。

 リーグ4球団が本拠を置く四国は、都市圏に比べても少子高齢化、人口減少の進行度が早い。高知県でも、他府県に比べて「10年早く少子高齢化が進んでいる」といわれる。

 高知県のHP上で公開されている「高知県のすがた2018」の人口データによると、高知県の人口は、2015年の72万8276人から、2040年には53万6514人にまで減少すると予測されている。

 高知は昨年、元メジャーの大物スター、マニー・ラミレスがプレー。そうした話題性もあって、1試合平均で昨年比229人増の740人の観客動員を集めた。それでも、県の人口が減少傾向にある中で、観客動員数がさらに好転していくことは、なかなか期待できないだろう。

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厳しい地方経済の中で…