掛布と宇野の10打席連続四球の日本記録は、4年後の1988年にあっさり更新された。そして、今度もまたタイトル争い絡みの茶番劇だった。

 この年、高沢秀昭(ロッテ)と首位打者を争っていた松永浩美(阪急)は、10月22日のロッテ戦(西宮)で第1、第2打席と連続安打を記録し、この日欠場していた高沢に1厘差の打率3割2分6厘まで追い上げた。

「次も打たれたら、松永に抜かれる」と慌てたロッテ・有藤道世監督は、残る3打席すべてを敬遠させた。だが、話はこれだけでは終わらなかった。

 両チームとも残り2試合。翌23日、直接対決のダブルヘッダーで全日程を終えることになっていた。阪急はオリックスへの身売りが決まっており、これが阪急としての最後の試合でもあった。

 ところが、阪急のラストゲームを見に来た3万7千人のファンは、松永の四球攻めというドッチラケシーンを無理やり見せられることになる。

 第1試合は4打席すべて敬遠。第2試合も6回までの4打席すべて歩かされた。この時点で前日から11打席連続四球となり、4年前の掛布と宇野の日本記録を更新した。

 そして、8回無死一、二塁で迎えた5打席目、有藤監督の指示は当然敬遠だ。スタンドの阪急ファンから大ブーイングが起きるなか、なんと、松永は3ボールから3回続けてバットを出し、自ら三振に倒れた。

「このまま険悪な雰囲気で終わるのも嫌だなと思い、バットを出したんです。そしたら、ブーイングが拍手に変わったんです。三振してあれだけ拍手をもらったのは、僕が初めてじゃないですか」(松永)

 わずか1厘差で首位打者を逃したものの、松永は阪急最後の試合で最も記憶に残る男になった。

 タイトルをめぐるファン不在の泥仕合は、何も打撃部門に限った話ではない。1998年10月12日のロッテvs西武(西武ドーム)では、両チームのファンは、盗塁王争いをめぐり、信じられないような光景を目にすることになった。

 ロッテ、西武ともにこの試合が泣いても笑ってもシーズン最終戦。43盗塁の小坂誠(ロッテ)を1差で追う松井稼頭央(西武)は3回に三盗を試みたが失敗。小坂も4回に三盗失敗とタイトル獲得に激しい火花を散らした。

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盗塁王をめぐる泥仕合の結果は?