そうした状況では一度チーム全体を自陣に下げて4-4-2のブロックを組み、そこから前のスペースを使って攻める形に変更した方が良いようにも見えた。

 だが、1点ビハインドという状況もあって、前からボールを取りに行こうとするディフェンスは変えず、そこで奪えなかったところから中盤の守備も縦に破られ、DFラインが相手の攻撃に晒される状況が続いた。

 後半15分から中盤の底に三竿健斗が入り、CB手前の強度は多少上がったが、山口蛍や三竿でもボールを奪いに行けばかわされる状況を変えることはできなかった。最終的に危険なシュートを打たれるまではいかないものの、試合終盤にかけて攻守の切り替わりが激しくなることで、中盤と攻撃陣が分断された状態が続いてしまった。

 マリ戦ではっきりしたのは、ハリルジャパンの強みである中盤でのボール奪取で、アフリカのチームに対して優位に立つのは容易ではないということだ。

 ボール奪取力に定評のある山口が、何度もタックルをかわされたシーンは象徴的だ。前半途中までのように前線、中盤、DFラインがコンパクトに連動できていれば、一発で奪えなくともコントロールミスなどからボールを拾い、味方の攻撃につなげることは可能だが、そうした時間を長く作れるわけではない。

 その場合はボールを奪うためではなく、縦に攻めさせないためのブロックを組んで、しばらく耐えてからラインを上げていくような組織的なゲームコントロールをしていく必要がある。ハリルジャパンの場合は1つ1つの守備でデュエルが発生しやすくなるが、全体として常に周囲の選手がサポートできる関係をつくっていかなければ、セネガルが相手となった時にかなり苦しい対応を強いられることは明白だ。

 5月30日にはガーナとホームで親善試合を行う。これが23人の登録メンバーを絞り込む前の最後の試合となる。ホームゲームで環境が異なるとはいえ、アフリカのチームに対してどう守り、攻め切るのかを実戦的に再確認する機会となりそうだ。(文・河治良幸)