宇賀神の基本的な特徴を整理すると、右利きながら左足の正確なクロスを備えており、特に深い位置まで攻め上がったところからマイナス気味に合わせる速いクロスを得意とする。

 さらに、右足のミドルシュートも備え、流れ次第ではペナルティエリア内まで侵入してフィニッシュに絡むケースもある。基本的なボールタッチは右足だが、必要に応じて左足のタッチも織り交ぜることができ、右利きであることが展開を狭くする要因にはならない。

 アップダウンも苦にしない豊富なスタミナと心肺機能を備えており、ACLではデュエルの部分でも圧倒的な強さはないものの、しつこく粘り強く相手アタッカーに付いて自由にさせなかった。

 イングランドのプレミアリーグをよく見て参考にしているという宇賀神。デュエルの重要性を常日頃から考えているようで、Jリーグの環境でもこだわりを持ってレベルアップに取り組んでいる選手の1人だ。

 とはいえ、欧州遠征の相手は“仮想セネガル”と想定される西アフリカのマリ、堅守と鮮やかなサイドアタックを武器とする“仮想ポーランド”のウクライナだ。

 セネガルのサディオ・マネ(リバプール/イングランド)やポーランドのロベルト・レバンドフスキ(バイエルン/ドイツ)といったワールドクラスはいないが、マリには身体能力の高い選手、ウクライナにはサイズとスピードを兼備したアタッカーが揃う。特にウクライナ戦では右ウイングを本職とするアンドリー・ヤルモレンコ(ドルトムント/ドイツ)と対峙する可能性もある。

 出場すれば、代表初キャップとなる宇賀神だが、いきなり高いパフォーマンスを披露していくしかない。ここで“良い経験になった”では、最終メンバーに生き残ることはほぼ不可能だ。

 攻撃面では、組み立てから攻め上がり、クロスの質、守備では局面のデュエルに負けないことに加え、攻撃から守備に切り替わった状況での正確な判断なども求められる。4バックに慣れたと言っても浦和と代表でまったく同じやり方ではなく、味方選手の個性も異なる。

 浦和の下部組織育ちだがトップ昇格できず、流通経済大ではサテライトチームから主力に昇り詰め、浦和との契約を勝ち取った経歴を持つ宇賀神。エリート街道とは無縁だった29歳のSBがこのチャンスをものにしてロシアの地を踏むことができるのか。要注目だ。(文・河治良幸)