動脈の3層構造のうち、内膜は血流の圧力や異物の侵入から血管壁を守るバリアーとして重要な役割を果たしています。内膜にある内皮細胞から放出されるNO(一酸化窒素)には動脈硬化を抑え、血管を広げる作用があります。中膜が十分に活動すると、内皮細胞が刺激されてNO量が増えます。

 人間のからだは、血管網が全身に張り巡らされ、毛細血管まで合わせて1本につなぐと、地球2周半ほどの長さになります。その血管網で動脈硬化が進むと、さまざまな生活習慣病の引き金となり、さらに血管の病気を引き起こします。すると、生活習慣病がさらに動脈硬化を進めて血管病を悪化させるという悪循環に陥るのです。

 主な血管の病気には、狭心症・心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、大動脈瘤、大動脈解離、下肢動脈閉塞症などがあります。また、血液の化学処理をおこなう肝臓や、血液の汚れをとって排泄(はいせつ)する腎臓の機能低下も起こり得ます。

 血管壁は単に年をとるだけでも、厚く硬く、もろくなっていきますが、生活習慣の乱れや不健康な状態が続くと、老化が急速に進むことになります。
 
 高血圧や高血糖、脂質異常などにさらされ続けた血管壁(内膜)には、小さな傷ができやすくなります。すると、この傷口から血液中の余分なLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が血管壁に入り込みます。

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