――仰るとおりですね。

 私自身、エンジニア出身というのもあって、短い時間で成果を出せるはずだという仮定に立って仕事をしています。長く働くのではなく、限りなく時間を短縮して必要な時だけ仕事をするという形が理想と思っているんです。そこでクラウドの使用や端末の配布、オフィスでデスクトップに向かわなくてもエンジニアが自宅などで仕事できるようにしました。

――今、総務省が推進している「テレワーク」的な、時間や場所を選ばない働き方を実践しようと。

 ええ。しかし、デメリットもありました。結果として、労働時間の管理が行えなくなり、隠れ残業をするようになったり……。

――“残業のステルス化”ですね。ある意味、現在ひとしきり行われている時間外労働短縮の議論の落とし穴でもあります。

 はい。我々社員が精神的に不調だったときに問題だったのが「ずっと仕事をしてしまう」という点でした。いろいろなプレッシャーや使命感で、責任があればあるほど隠れてでも多く仕事をしてしまう。我々としても、会社貸与のPCなどデバイスのパスワードを変更してアクセスできないようにするなど、対処はしていたんですが、なかなかうまくいきませんでした。次第に仕事と休みを「区切る」ことが健康的働き方、そして生活に欠かせないと気づき、新たなツールをつくろうと思い立ったのです。

――会社の制度改革ではどうしても抜け道ができてしまうから、ツールの開発で問題を解決しようというわけですね。

 そういうことです。我が社はモバイルデバイス管理サービスを提供しているのですが、新機能として『ワーク・スマート』という機能を開発しました。これを使えば管理者が設定した業務終了時間に会社貸与のスマートデバイスを自動で機能制御できるので、社員ひとりひとりの隠れ残業の実態を把握、無理な働き方を止めさせることもできるのです。

■「しっかりとした生活、その中での仕事」が可能になる働き方を志向したい

――“健康経営を実現するためのツール”は御社だけでなく、すでにサービスとして一部で提供しているそうですね。

 ええ。まだ実験的導入の段階ではありますが。我が社での導入実績からすると、やはり生活と仕事を『区切る』ことが明確にできるツールは今後、重要性を増すと思います。これからリモートワーク(テレワーク)のような新しい働き方が一般化すればするほど、生活と仕事を区切ることは難しくなりますからね。

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