――けん太さんは自分が障害者と呼ばれることには抵抗はありませんか。

 障害者って言われるのは嫌じゃないですが、ダウン症の方がいいです。「ダウン症のイケメン」だったらもう最高ですね。

 以前、就労支援センターに通っていた頃に、後輩の男の子から「けん太って知的障害なの?」って聞かれて、ムカってきたことがあります。

 知的障害って言葉は、頭がおかしくて、何もできないみたいじゃないですか。僕はゲームもパソコンもできます。自動車の免許も持ってますから。知的障害者じゃなくて「すてき障害者」ですよ。おお、今いいこと言いましたよね(笑)。

――もしも障害がなかったらと考えることはあるのでしょうか。

 一回もないです。以前、僕が出演したテレビで、「障害がなくなる禁断の実があったら食べるか?」っていう話になったんです。一緒にテレビに出ていた障害のある人たちには、食べたい人と食べたくなく人どっちもいて。僕はまったく食べたいと思いませんでした。だって食べちゃって「ダウン症のイケメン」じゃなくなったら嫌じゃないですか。まったく食べたくないです。

 僕はほんとに毎日ハッピーなんですよ。仕事は楽しい。家族と仲がいい。彼女ともうまく行っている。健康でビールも美味しく飲めている。悩みとかないかもしれません。

――けん太さんが最高に「ハッピー」を感じるのはどんな時ですか。

 うーん、いつも最高だからなあ……。休日の昼間にビールを飲んで、ちょっとだけ昼寝するんです。自分のベッドじゃなくて父のベッドを借りて。至福の時だなあと思います。

 レスリングの練習の後に、大好きなラーメン屋さんに行って、つけ麺の並み盛りを食べながらのグラスビールっていうのも最高です。

 道を歩いていて「握手してください」って言われるのも最高ですね。俺って人気者なのかなと嬉しくなります。最高がいっぱいです。

――初めてのエッセイ集『今日も一日、楽しかった』で最も伝えたかったことはなんですか?

 本の中には、僕の全部を書きました。相模原の事件に怒っていること、母を亡くして悲しかったこと、彼女とデートして楽しかったこと、全部です。カッコいいことだけじゃなくて、カッコ悪いことも。エッチなビデオが見たくて、兄の部屋に忍び込んで怒られちゃった話もあります。あ、これは今言わなくてもよかったかな(笑)。

 毎日楽しくて、すげえハッピーな「ダウン症のイケメン」がいるんだって知ってもらえたら嬉しいです。

(文・構成/日野淳)