老け込んだ親の姿にハッとしたことはありませんか? そんな親のきもちや行動を、もしかしたら私たちは誤解しているかもしれません。大阪大学大学院教授で、老年行動学を専門とする佐藤眞一先生のやさしい文章と、まんが家・北川なつさんのマンガで、老いた親のきもちをわかりやすく解説した『マンガで笑ってほっこり 老いた親のきもちがわかる本』(朝日新聞出版)から、いくつかのアドバイスを紹介します。第9回は「どうして何度も青春時代の話をするの?」です。

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 親の話を聞いていると、「昔はよかった」と過去を懐かしんでいることがよくあります。特に青春時代の話が多く、「自分が若かった頃は……」と武勇伝のように同じ話ばかり聞かされ、うんざりしている人もいるでしょう。また裏を返せば、現在の暮らしに不満があるのかと心配になったりもします。

 人は強い感情をともなった出来事ほど記憶しやすく、思い出しやすいものです。青春時代といえば進学、就職、恋愛、結婚と、重要なライフイベントが集中している時期。なおかつこれらには様々な強い感情をともなうので、自然にこの時期の記憶が増えることになります。これらの記憶は、時間がどれだけたっても思い出しやすく、この現象を「レミニッセンス・バンプ」と呼びます。

 また、記憶は、ネガティブなもののほうが早く忘れられることがわかっています。高齢になるとポジティブな記憶、若い頃の記憶が多く残り、「昔はよかった」と繰り返すのです。

 青春時代を思い出し、家族に話す時間が親にとって楽しいものとなるよう、じっくりと聞いてあげたり、時には質問してみたりなど工夫してはいかがでしょうか。

【Happyアドバイス】
親が「昔はよかった」と言うのは、残された時間を楽しく生きるための知恵なのかもしれない。