一方、伊東は右翼に定着して2年目だが、これが見事なまでの当たり役。いまや縦にぶち抜いて決定的なラストパスからアシストを稼ぐ本格派のウイングだ。そうかと思えば、目の前の敵を次々とかわすスラロームから点まで取る。その技術とスピードは海外組に少しもひけをとらない。いまだ声が掛からないのが不思議なくらいだ。

 激戦区のポジションだけに食指を動かしにくいのだろうが、国内組というだけで『格下』扱いされてはたまらない。アジア最終予選で貴重なゴールを奪い、日本を救った山口、今野泰幸(ガンバ大阪)、井手口も国内組なのだ。もっとチャンスを与えられていいのではないか。

 もちろん、代表で戦う相手は常に外国人だから、彼らと日常的に争う海外組に利がある――との理屈を無視するわけではない。そこで最後にオランダへ渡った逸材・堂安律(フローニンゲン)の名前も挙げておこう。

 今年5月のU-20ワールドカップで4試合3ゴール。人を食ったプレーで強国の猛者たちを手玉に取った才覚と強心臓の持ち主だけに、どこまで伸びるか楽しみだ。

 ごく短期間でも驚くほどの成長を遂げてしまうのが若者たちの特権である。その意味では、まだ頭角すら現していない『ミスターX』が、ロシア行きのチケットを手にしても、まったく不思議はない。(文・北條聡)