吉本新喜劇では1月2日に初舞台があるため、必ずその日に年始の挨拶に行くという風習がある。そして、先輩芸人が楽屋入りすると、一人ひとりに「明けましておめでとうごさいます、今年もよろしくお願い致します」と挨拶する。挨拶が終わると一人ずつ楽屋に呼ばれ、お年玉をもらえる。そのため、楽屋の外は若手で大行列になる。中には、衣装さんやメイクさんにもあげている先輩さえいた。

 これも有り難い話であるが、劇場に先輩が不用になった服や靴など、さらにはエッチなビデオなどを持ってきてくれて、「欲しいやつ、持ってて」と言って、後輩が宝の山をかきあさることがある。一応、上の先輩からもらっていき、最後に末端の若手に行き渡る。

 まるで、アフリカのサバンナでライオンが食べ残したシマウマの死骸を突ついているハゲワシの様な光景と言ったら言い過ぎかもしれないが、余すことのないようにすべてが誰かに行き渡る。ちなみに私はあの木村祐一さんのお下がりの紫のTシャツを戴き、今でも愛用している。

 芸人の世界は、体育会系気質があり厳しい部分もあるが、その分、一般社会では味わえないような恩恵も多々あり、毎日が刺激的であることは間違いない。(文 元吉本芸人・新津勇樹)