それを目の当たりにして、自分の信念が揺らぎ始めてしまって。もしかしたら、見た目って、すごく重要な要素なのかもしれないと。それで自分も変わってみたいと思うようになりました。知人に詳しく聞いてみたら、しぎはらさんにコーディネートをしてもらったということだったので、私もお願いしたいと思って申し込んだんです。

しぎはら:そうだったのね。ありがとう、嬉しいわ。慶子さんは今、29歳よね。これまでおしゃれに興味がなかったってことだけど、普段はどんなお洋服を着ているの?

慶子さん:証券会社勤務で、職場は外部の方との打ち合わせの日以外、スーツ必須というわけではないのですが、私は黒、紺、グレー、茶のスーツを着まわしています。シャツは白かストライプか、仕事に差し支えない感じに。

しぎはら:じゃあ、服が武器になるなんて考えたことはない?

慶子さん:武器、ですか……。はい、全く。おしゃれして媚びてると思われるのが、嫌だったんです。仕事の中身で勝負したいし、服は仕事の中身じゃないじゃないって。女が服でよく見せようという発想をしていたら、男と同じスタートラインに立てない気がするんですよね。それにとにかく男性に負けるのが嫌で。

■とにかく男に負けたくない、それだけを考えていた

しぎはら:“男に負けたくない!”って気持ち、わかるわ。私もそうだったの。仕事を頑張るほど女性は、心のなかでそう思うことあるわよね。その闘争心を外見や態度に表すかはまた別問題だけど。慶子さんは“女扱い=軽く見られている”って思っているの?

慶子さん:はい。それは母親の影響もあると思います。私の母親はずっとフルタイムで働いていて、当時(私が幼い頃)としては比較的珍しかったんです。家庭も仕事もこなして、とても頑張る母だったと思います。

「慶子ちゃんのお母さんはキャリアウーマンね」

 って言われてたから、自分も優秀じゃなくちゃいけないと思っていました。勉強はできて当たり前という雰囲気で。今思えば、「優秀であれ、真面目であれ」という無言の圧力があったと思います。おしゃれしたいなんて、言えなかった。

しぎはら:お母様、立派な方ね。慶子さんみたいな考えの方も多いわよ。でもね、私の考え方はちょっと違うの。男の人と全部同じようにやるのは難しいし得策ではないと思うの。やっぱり女性は女性なりのやり方を見つけなくちゃ。体力も違うし、出産というターニングポイントもあるかもしれない。短い時間でいろいろ結果を出さなきゃいけないって考えたら、戦略も変わってくると思わない?

慶子さん:そこなんですよね。私、今まで男の人と同等に“がむしゃらに頑張る”っていう方法しか頭になかったんです。でもセミナーの知人を見て、もしかしたら何か別の考え方があるのかも、って思ったんです。

■彼氏いない歴10年の理由

しぎはら:女性ならではの生き方や戦略ってあると思うのよ。それこそが服を味方につけるということ。もちろん、男性の視線を集めたいっていう願望に沿って戦略を立てることもあるわ。でも、ビジネスにおける女性ならではの強みを見いだす戦略もある。実際に、装いを変えたことでキャリアを勝ち取った方もたくさんいるの。

 私は、慶子さんが仕事上で男性とどのように接しているかを、もう少し突っ込んで聞いてみました。

しぎはら:職場の男性に対しては、闘争心メラメラなの?

慶子さん:ええ、割と態度に出ていると思います。過度に女らしい服装はしないですし、口調も行動も、無駄なくテキパキを心がけています。

しぎはら:さすが、ビジネスウーマンとして意識が高いわね。それで何か困っていることはある?

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