日本ハム・大谷翔平もセットポジション投手のひとり(c)朝日新聞社
日本ハム・大谷翔平もセットポジション投手のひとり(c)朝日新聞社

 西武のエースを務める菊池雄星が、過去に2度、あるチャレンジをしていたことがあった。

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「シーズンの順位に関係ないという試合に登板するときがあれば一度、戻してみたいとは思う」

 あるチャレンジとは、振りかぶって投げるワインドアップモーションをすることだ。花巻東高時代、あるいはローテーションに定着するまでの菊池は軽快に身体全体を使ってダイナミックに投げるピッチャーの一人だった。
 
 それが2014年シーズン途中、当時の首脳陣の指示を受けて以降、菊池は走者がいなくてもセットポジションで投げるようになった。

 冒頭の言葉は昨シーズン中のものだが、菊池はセットポジションで投げるフォームで昨季は自身初の二桁勝利となる12勝をマークした。今季も開幕戦勝利を挙げるなど、6月28日現在で7勝と好調をキープしている

 実は、これ、菊池だけではない。日本ハムの二刀流右腕・大谷翔平、侍JAPANとしてWBCのベストナインに輝いた千賀滉大(ソフトバンク)や阪神の藤浪晋太郎、千葉ロッテの石川歩、中日大野雄大など、各チームのローテーションピッチャーに、最近は多い傾向なのだ。

「ダルビッシュさんもそうですし、最近は、若い投手もセットポジションで投げるピッチャーが多くなっていますよね。」

 以前、中日の大野にセットで投げることについて尋ねると、そうした世間的な流れも影響しているのではないかという指摘をもらった。

 投手といえば、振りかぶって投げるワインドアップの方が断然にいい。私もそう信じてきたひとりだが、今やそれも有効な投球フォームのとして認知しなければいけないのだろうか

 セットポジションにする理由を菊池はこう力説する。

「ワインドアップで投げたかったですけど、今は、セットの方がいいように感じています。シンプルにするというのが一番の利点です。投球で大事なのは股関節に体重が乗るかだと思うんですけど、振りかぶってしまうと、どうしてもうまく一本足で立てなくなったり、股関節を大きく使う要因になります。そうなると、球もぼやけてしまう。セットだと小さい軸で小さいラインで投げやすくなります。セットで投げたほうが球速が上がっているので問題はないかなと。結局、ワインドアップで勢いをつけても、その勢いを支える投球フォームでしっかり投げることができなければ意味がないんです。極力、動きが少なくて、ロスが少ないセットの方がいいかなと思います」

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