当選確実の報を受け、笑顔で万歳をする豊田真由子氏。この頃からすでに暴言がひどかったという=2012年12月16日 (c)朝日新聞社
当選確実の報を受け、笑顔で万歳をする豊田真由子氏。この頃からすでに暴言がひどかったという=2012年12月16日 (c)朝日新聞社

 今月22日発売の「週刊新潮」で、男性秘書に暴行し、暴言を浴びせたと報じられた豊田真由子衆院議員(42)。同誌がネット上に公開した音声では、耳を疑うような罵詈雑言や、相手を恐怖に陥れるような想像の話を自作の節にのせて歌う様子が聞かれる。ミスをした部下への叱責の限度を超えるこの振る舞いを、著書『オレ様化する人たち――あなたの隣の傲慢症候群』(朝日新聞出版刊)の著者で精神科医の片田珠美さんが分析、寄稿した。

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 秘書に対する暴言や暴行が週刊誌で報じられた翌日の23日、自民党に離党届を提出した豊田議員には、「傲慢症候群」の典型的な特徴がいくつも認められる。とくに次の3つが重要である。

(1)強い特権意識
(2)想像力と共感の欠如
(3)衝動コントロールができない

(1)強い特権意識
 豊田氏には、「自分は特別な人間だから、少々のことは許される」と思い込んで暴走する面があるように思われる。こうした傾向は、秘書への暴言や暴行だけでなく、2014年4月に園遊会に出席した際に起こしたトラブルにも如実に表れている。

 園遊会に招待されるのは現職の国会議員と配偶者で、他の家族の同伴は認められていない。しかし一部報道機関によると、豊田氏は本来招待されていた配偶者ではなく、母親を入場させようとしたらしい。そのため、受付の職員が豊田氏に「招待者でない方は入場できない」と説明すると、豊田氏は大声を上げて抗議し、皇宮警察が出動する騒ぎになったという。

 これは、強い特権意識ゆえに「自分は特別有利な取り計らいをしてもらって当然の人間」だから「普通の人に適用される規則は、自分には適用されない」と思い込んでいたからではないだろうか。

(2)想像力と共感の欠如
 自分自身の言動が相手にどんな影響を与え、どんな反応を引き起こすのか、想像できない。また、相手の気持ちを認識しようとせず、痛みに共感できない。だからこそ、人を人とも思わない暴言を吐くのだろう。

 豊田氏は、気性の激しさから、永田町では「第二の田中真紀子」と呼ばれているとも聞く。それだけに「人間には3種類しかいない。家族、使用人、敵。使用人は忠実に従いなさい」という名言を吐いた田中氏と同様、人間を3種類に分類していたのかもしれない。だとすれば、豊田氏にとって、秘書は使用人のカテゴリーに入っていたはずで、使用人には何を言っても、何をやっても許されるという驕りが暴言や暴行を生み出した可能性もある。

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