●今や誰も関心のない規制改革

 その問題とは、「規制改革」である。

 加計学園に関する「総理のご意向文書」は、追加調査の結果その存在が認められることになるであろう。

 しかし、安倍政権が譲歩するのはそこまでで、次の段階では、その文書に書かれている「総理のご意向」などという言葉に表された「総理の指示または関与」については、また「知らぬ存ぜぬ」路線で強行突破を図るはずだ。

 官邸側が、その路線で加計学園問題を乗り切ろうとする際の生命線が、「規制改革」である。文書の存在が明らかになれば、内閣府の官僚が、文科省を説得する際に、「総理のご意向」を水戸黄門の「葵の御紋」のように使った疑いはますます深まる。

 しかし、官邸側が展開する強力な防御の盾は、「総理のご意向」とは、「規制改革を不退転の決意で進めよ」という「ご意向」であって、そのことを内閣府の官僚が口にしても何ら問題ない。それどころか、官僚や既得権団体、さらには族議員の反対が強い問題については、総理主導で進めるしかない。したがって、「総理のご意向」という発言は、むしろ好ましいくらいだというのである。これこそ「真の政治主導」というわけだ。

 では、総理や官邸が強調する「岩盤規制にドリルで穴を開ける」ような改革はどれだけ進んだのであろうか。

 ここで興味深いのは、日経新聞の今回の骨太方針に関する翌日の記事の見出しである。

 6月10日付日経新聞デジタル版では、-「安倍1強」生かせず アベノミクス5年、骨太方針決定-、朝刊紙面では、-アベノミクス5年 不完全燃焼-、小見出しには、-安保に偏り―とあるのだ。その中では、「規制改革などを武器とした成長力のエンジンは不完全燃焼のままといえ、政権が掲げる経済最優先の看板はかすんで見える」として、規制改革などが進んでいないことをはっきりと認めている。アベノミクス擁護派と目される日経新聞もこうした見方をしているのだから、明らかに、安倍政権の規制改革は看板倒れと言ってよいだろう。

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