W杯本大会も厄介だ。3カ国で1次リーグを戦うということは、たった2試合で決勝トーナメント進出が、あるいは敗退が決まるのだ。突破の単純な確率は現行の2分の1から3分の2へ上がるものの、運悪く同組の2枠に強豪が入れば、1週間もしないうちに「終了」となりかねない。先(トーナメント戦)へ進めるかどうかは組分け次第というのは現行方式でも同じだが、クジ運に恵まれなかった時のダメージはこれまで以上大きくなりそうだ。予選はスリルのない安泰なものになる一方で、本大会での決勝トーナメント進出への難易度が上がり早期敗退が増えるとなれば、世間の日本代表への熱が失われてもおかしくはない。

 もっとも、9年後(アジア予選は7~8年後)の話だから、日本を取り巻く状況が大きく変わっている可能性もある。サッカー界へ多額の資金が流れる中国やUAEに加え、タイやベトナム、インドネシアといった東南アジア勢が力をつけ、アジアの勢力図が現在とは違うものになっていても、おかしくない。

 こうした国々にも本大会への扉が開かれれば、各国の国内でのサッカー熱がいっそう高まり、それが代表強化へつながる好循環を生み出すだろう。初めてアジアの壁を破った1998年フランス大会以降、W杯の「常連」となった日本のように――。それが、アジア全体のレベルを押し上げるなら、日本にとっても悪い話ではないはずだ。

 ともかく、今回の決定が及ぼしうる悪影響を取り除くには、人材への投資を含む「成長戦略」を、いま以上に実りあるものにすることだろう。未来は、自分たち次第で、いくらでも変えられる。(文・北條聡)