「14歳の挑戦は原則、全員参加。いろんな子がいますから、送り出す側、受け入れる側とも、試行錯誤しています」(県教委の担当者)とのこと。学校側には「職場の迷惑にならないか」という心配がある。実際、運送会社で荷物を落としたり、遅刻したり、無気力な態度を取ったり、はしゃいで叱られたりするケースもないわけではない。

「事業所から“挨拶をしない”、“さぼってばかりいる”などのクレームが来た場合は、“注意してやってください”とお願いしています。時には、教員が謝罪に出向くこともある。生徒には反省を促します。社会に出て責任をもって役割を果たすとはどういうことなのかを学び、失敗を恐れず挑戦してほしいのです」(県教委の担当者)

 まだまだ成長過程にある中学生を「厳しくも温かく見守ってほしい」というのが地域への要望である。「14歳の挑戦」の後、学校や保護者と地元企業との縁が深まるという利点も少なくない。保護者からの声はおおむね好評だ。

「息子が地元のラジオ局でお世話になりました。番組を作る資料として、事前に友人を取材するという課題を与えられた。テスト期間中だったから四苦八苦。何とか1週間が過ぎ、最終日にゲスト出演させてもらって音源が入ったCDをもらってきました。お礼を投書したら、番組で読んでくださいました」(保護者)

 父の職場で“挑戦”したり、伝統工芸の職人さんに学んだり、プロスポーツ選手が所属する球団の仕事を体験したり……中学生にとっては未知の世界を垣間見る貴重な体験だけに、疲れや緊張感は相当なものらしい。「1週間、勉強はまったく手につかない様子で、家に帰ってぐったりしていました」(保護者)との声もある。

 記者も報道機関に勤務していたころの数年間、中学生の指導役を務めたことがある。教員志望だった時期もあるので、中学生と接する時間を有意義に感じた。取材先ではきはきと質問する姿や、パソコンの前で腕組をして考え込む様子に初心を思い出させてもらった気がする。

 母校から来た中学生のなかで、驚くほど速く正確に記事を書いた男子生徒がいた。「すごい、即戦力!」と驚き、母校で教員を務める知人に聞いたところ、「生徒会長も務める優秀な子だよ」とのこと。納得である。彼は今、20代前半のはず。どこかで新人記者になっているのだろうか? マスコミ以外の企業に入っていたとしても、きっと活躍しているだろう。「14歳の挑戦は役に立った?」と聞いてみたい。(ライター・若林朋子)