シーズンも終盤戦に差し掛かるこの時期のケガとなれば、疲労の蓄積が真っ先に原因として思いつくところだ。現に今大会でも、第1シードとして出場予定だったスタン・ワウリンカが腰の痛みのために欠場。主催者推薦枠を得ていたホアンマルティン・デルポトロも、体調不良で来日がかなわなかった。加えるなら世界1位のノバク・ジョコビッチも、疲労のため今週北京で開催中のチャイナ・オープンを欠場。多くの大会への出場義務が発生し、出た大会では勝ち上がるため必然的に試合数が増える上位選手たちほど、今は疲労やケガとの戦いを強いられている。

 ちなみに先週末時点での今季の試合数(シングルスのみ)は、ジョコビッチが56勝6敗の62試合、ウィンブルドンおよび五輪優勝者のアンディ・マリーが55勝9敗の64試合で、先の全米優勝者のワウリンカは42勝13敗の55試合。そして錦織が、51勝15敗の66試合。上位4選手を上回る試合数であり、トップ10選手の中でも錦織は、10位のドミニク・ティームに次ぐ2番目の試合を戦ってきたのだ。錦織本人は、今回のケガはあくまで突発的なものであり、今夏の過酷なスケジュールとの関連性は「全く分からない」と言う。だが腰の痛みは感じていたため、「もしかしたら、それが関係しているのかも」とも振り返った。

 上海を欠場する錦織だが、その翌週のスイス・インドア、そしてレギュラーシーズン最後の大会となるBNPパリバ・マスターズは出場予定。彼が今なお大会出場に──つまりはランキングポイント獲得に──執念を燃やすのは、シーズン上位8選手のみが立つことができる、「ATPツアーファイナルズ」出場を確実にしたいがためである。錦織の現在の“レースランキング”は5位。既に上位3選手は出場権を獲得しており、錦織もあと500ポイントほど上乗せすれば当確ラインへと駆けこめる。9位以下の選手とは1500近くのポイント差があるとはいえ、精神的に楽になるためにも、早めに自力で8人枠の一つを確保したいというのが本音だろう。

 上海欠場を決めた錦織は、すぐにフロリダ州の自宅へと戻り、リハビリに励む予定だという。シーズン最後の戦いに向け、今こそが正念場かもしれない。(文・内田暁)