お気に入りのプラスチック武器を掲げる匠工芸代表の折井さん
お気に入りのプラスチック武器を掲げる匠工芸代表の折井さん
匠工芸には、さまざまな形のプラスチック武器が展示されている
匠工芸には、さまざまな形のプラスチック武器が展示されている
イベントなどでは、スタッフがコスプレをして武器の世界観を表現する(匠工芸提供)
イベントなどでは、スタッフがコスプレをして武器の世界観を表現する(匠工芸提供)
武器のイメージからつくり出されたオリジナルキャラクターたち(匠工芸提供)
武器のイメージからつくり出されたオリジナルキャラクターたち(匠工芸提供)

「外国人に本気のクレージーを伝えたい」という思いから、ハートをかたどった「ロリータ包丁」、チョウをモチーフにした「ゴスロリ包丁」を生み出し話題となっているプラスチック加工会社、匠工芸(兵庫県高砂市)。実はそれ以外にも数多くの「クレージー」な製品を生み出している。

【光る剣から魔法のステッキまで、その他の写真はこちら】

 匠工芸に足を踏み入れるとまず目に入るのが、ずらりと並んだ“武器”だ。ドラゴンクエスト(ドラクエ)やファイナルファンタジー(FF)といったゲームやアニメに出てきそうな武器の数々である。非常に精巧にできたこれらは、すべてプラスチックでできている。

 企業向けのショーケースや看板などを手掛ける匠工芸だが、2014年からコスプレ用の武器造形ブランド「TAKUMI ARMORY(タクミアーマリー)」も展開しているのだ。スタンダードな勇者っぽい剣やFFに出てくる暗黒剣のような剣、巨大なおのや鎌……筆者を含むゲーム、アニメ好きにはたまらない品ぞろえだ。京都の電子機器製造会社と製作した、つばから刃にかけての模様が赤く光る「光る剣」もある。

「持ってみますか?」 匠工芸代表、折井匠さん(38)に勧められて手にしてみると、意外と軽い。しかし、精巧な造りに自分が物語の登場人物になったようで、テンションが上がり、口元が緩む。折井さんがプラスチック武器作りを始めたのは、受け手のこのような反応からだった。

 子どものころからアニメ「機動戦士ガンダム」やドラクエなどのゲームが大好きだった折井さん。ガンダムのプラモデルでものづくりの楽しさに目覚め、高校卒業後はプラスチック加工会社で技術を身につけた。そして2008年、「人を笑顔にしたり、明るくできたりするものを作りたい」と独立し、匠工芸を設立した。

 起業後は、利益を出そうと必死で働いた。しかし、お金をもうけることばかり考えてしまい、事業は軌道に乗ったが、折井さんの心は荒んでいった。信頼するスタッフや友人たちも徐々に離れていき、3年が過ぎたころ、「なんかちゃうな」と立ち止まった。そんな時に思い出したのが、子どものころに夢中になったガンダムやドラクエだ。

「ものづくりを通して人とつながって、笑顔にすることが(起業の)目的だったのに、合理的に考え過ぎていた。若い世代や一般の人たちとも、接点を持てるものづくりがしたい」(折井さん)

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