切り離したパーツを水につけ、磁器に張る。位置を決めたら、後はヘラ状の道具で磁器と転写紙との間の空気を抜き、パーツを密着させる。平らな面はなんとかなるが、湾曲した部分が難しい。切り離してしまったパーツは、つなぎ目を合わせると、なんとかつながった。強くこすると破れるので、ゆっくりと、丁寧に空気を抜く。無心で没頭していると、楽しくなってきた。

 作業はこれで終了。どうなることかと思ったが、ぱっと見にはおしゃれ(?) な仕上がりである。一緒にレッスンを受けた人たちのデザインを見ると、上品な花柄や、ストライプやダマスク柄をベースにイニシャルやリボンを組み合わせた凝ったものなど、それぞれ違っているのもおもしろい。

 船木さんがポーセラーツを始めたのは、約5年前、友人に誘われたのがきっかけだ。もともと細かい作業をするのが好きだったこともあり、すぐにはまった。そのうちに本格的にやりたくなり、2014年、教室を探して基礎から学び、インストラクターの資格を取得した。

 船木さんは、ポーセラーツの魅力を「簡単にできて、実用的なこと」と表現する。「絵を描かなくても、転写紙をはっていくだけで市販品のようなクオリティーの作品ができる。オリジナルの作品が作れるため、プレゼントにもおすすめです」。うわぐすりが塗ってあるものなら、量販店で販売している磁器にデザインを施すことも可能だという。

 ポーセラーツ倶楽部によると、現在、日本ヴォーグ社が認定するインストラクターは全国で7000人以上。教室を開いて教える人、趣味として楽しむ人などそれぞれで、少数ながら男性もいるという。同倶楽部のスタッフは「絵心がなくてもできるため、幼稚園児からお年寄りまで間口は広い。レベルに応じて、転写紙を使う以外に、絵の具や色鉛筆で磁器に絵を描いたり、金彩をプラスしたりと、長く続けられるのも魅力」とPRする。

 一緒にレッスンを受けた30代の女性は「デザインを考えるのが楽しかった。オリジナルの食器だと普通にお店で買うのより大事に使えそうだし、プレゼントにも良さそう」と話す。

 一からデザインを考えるのは勇気がいるが、転写紙を使えば、あれこれとパーツを組み合わせるだけでそれなりに様になるので、安心して取り組めた。この手軽さとおしゃれ感に引きつけられるのだろうか。調子に乗って、違った雰囲気のデザインにも挑戦したくなった。

(ライター・南文枝)