ビジネスマンだけでなく、東京散策の観光客にも人気になりそうだ
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大手町の新しい顔になりそうなグランキューブ
大手町の新しい顔になりそうなグランキューブ
「SPA大手町」にはトレーニングジムもある
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オフィス街の真ん中で20メートル級のプールは珍しいかも?
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レストランやカフェが並ぶ「大手町仲通り」も温泉とともに開業する
レストランやカフェが並ぶ「大手町仲通り」も温泉とともに開業する

 東京都心・大手町で、いよいよ天然温泉に入れる日がやってくる。

 オフィスビルの摩天楼が立ち並ぶ大手町の一丁目に5月9日にオープンする「大手町温泉」と名づけられた湯は、地下1500メートルの深さからくみ上げられている療養泉だ。

 湯をすくってみれば、ほんのりと茶褐色。つかってみると、とろりとした肌触りが心地よく、湯冷めしにくいという。

 泉質は「含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉」。食塩泉とも呼ばれるタイプの温泉で、殺菌・保湿効果に優れている。

 神経痛や打撲、関節痛、胃腸機能の低下などに効能があるほか、冷え性やうつ状態、皮膚の乾燥も適応症だ。都心のオフィス街に働いている人にとってはまさに癒やしの泉かもしれない。なめらかな湯に全身を沈めてリラックスしていると、ここが日本屈指のビジネス街だということを忘れてしまう。

「東京で天然温泉?」と疑問に思うかもしれないが、実は東京23区は日本でも有数の「温泉郷」なのである。一見すると、ごくふつうのスーパー銭湯や、一般的な銭湯に見えて、実は湯が天然温泉というものがたくさんあるのだ。

 昨年11月に刊行された『東京天然温泉ガイド』(メディアパル)によると、東京は日本で最も温泉が密集している地域なのだという。10平方キロメートルあたりに存在する温泉施設の数を「温泉密度」というが、この数値の1位が神奈川、2位が大分だ。東京は4位なのだが、23区に限定すると温泉密度はトップとなる。

 とくに多いのは大田区をはじめとする東京湾岸地帯。海底のプランクトン層から湧き出る「フミン酸」という成分を含む天然温泉が無数にある。このフミン酸の湯は、まるで烏龍茶かコーラのような色をしており、真っ黒だ。そのため大田区は「黒湯温泉郷」とも呼ばれている。

 黒湯と並んで、東京温泉を代表する泉質が大手町温泉のような食塩泉だ。東京の内陸部を深く掘削していくと、こうした湯が湧き出すことが多いという。

 大手町温泉は、丸の内エリアの再構築事業の一環でもある。三菱地所によるプロジェクトによって4月に竣工(しゅんこう)したオフィスビル「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」の地階にオープンした「SPA大手町」の施設のひとつだ。

 温泉も心地よいが、長さ20メートルのプールは火照りを冷ますのにちょうどいいし、これだけの大きさなら快適に泳げる。トレーニングルームもある。女性には岩盤浴も人気が出そうだ。これらの施設はビジターでも1620円で利用できる。

 プロジェクトの担当者は「周辺のオフィス街で働き、仕事に疲れた人の癒やしに、あるいは皇居ランで汗をかく人のステーションとして活用されると思います。外国人観光客も増えるでしょう」と話す。

 7月にはグランキューブ内に日本旅館も開業の予定となっているが、やはり外国人のビジネス・観光客の需要も大きくなると予想されている

災害時には、大手町温泉を含むスパ施設を被災者や帰宅困難者、それボランティアなどに開放します。電力会社からの供給が止まっても電力が使用でき、冷暖房を稼働させられるシステムを備えています」(同・担当者)

 いざというときにも、心強い存在になりそうだ。(文・写真/室橋裕和)