また試合後、演技内容について「今回はすごく良かったと思っている」と話した内村。演技の難しさなどを示す「Dスコア」を上げて臨んだ今大会だったが、実はこの演技構成は内村をもってしても「試合ではノーミスで通し切れたことがあまりない」というもの。その出来については次のように話した。

「今日は着地まで決めることができてよかった。自分の中でつり輪の内容はあまり満足いってないんですが、その完成度をもっと上げることができれば。今日のところはミスをしないということを課題にしていたので、そこについては満足しています」

 一方、リオ五輪の代表争いでは、加藤と田中が接戦を繰り広げた。最終種目の鉄棒まで勝負の行方が分からない白熱した試合展開で、先に鉄棒の演技をした田中が15.900点という高得点をマーク。この時点で加藤は15.6点以上を出さなければ勝てないという状況だった。試合中に計算してそのことを知っていたという加藤は、鉄棒の演技直前の心境をこう振り返る。

「15.6点を出さないと勝てないことは知っていたんですが、なかなか出せる点数じゃないので。でもここまで来たらそこにこだわっても点数は出ないと感じたので、本当に開き直った。これで成功しても失敗しても自分の実力だと」

 そうして臨んだ鉄棒では、持ち前の安定感と勝負強さを存分に発揮。着地まで確実にまとめ、きっちり15.6点をたたき出した。

試合後に「最後のプレッシャーのかかる場面でしっかり着地まで止めることができたのは、五輪のピリピリした場面でもこういう演技ができる自信がついた」と話した加藤。リオ五輪でも、頼もしい存在となりそうだ。

残る3人のリオ五輪代表選手は、6月に行われる全日本種目別選手権の後に決定する。

文=横田 泉