後から、なぜ「バスに乗らないと言ったのか」と問いただすと、「バス停で(車から)降ろされずに学校まで連れて行ってもらえる」と思ったからだという。 お寺からバスの運転手に発見された場所までは約10キロ。お坊さんだからといって、常に穏やかに子どもと接するのは難しいようだ。

 仏教のお経に、「菩薩は生きとし生けるものをわが子のように慈悲を持って接する」とある。だが、ネルケさんは「それは子どもがいない昔のお坊さんが考えたこと。母親なら無条件の愛がある、という母性神話を100%信じなくていい。大切なのはイライラをため込まないことだ」と話す。

 さらに、大切なのは怒らないことではなく、怒ってしまった時のアフターケアだとも。「怒りっぱなしだと今度は子どもがイライラしてしまう。子どもにも言いたいことを言わせて仲直りする」。その上で「怒った理由をきちんと説明すること。子どもは理由が分からないと成長しない。自分の勘違いで怒ってしまった場合はちゃんと謝る」ことも重要だという。

「家庭では毎日が修行」だとネルケさんはいう。やはり子育ては修行なのかと思いながらも、「イライラは自然」というネルケさんの言葉に心が少し軽くなった。できれば「イライラしない子育て」をしたいが、まずは「イライラしても、アフターケアを怠らない子育て」を心がけることにしよう。

 1日の終わり、寝床では「ごめんね。もうしないね」と言ってくる娘。しかし、次の日また同じことをする娘。そして怒ってアフターケア。その繰り返しでも、少しずつ良い方向に向かっていることを願いたい。

(ライター・南文枝)