翔んで埼玉』では「犬以下の埼玉県民をかばいだてするつもりか」「ああいやだ! 埼玉なんて言ってるだけで口が埼玉になるわ!」とまで罵倒されているのに、なぜ埼玉県民にこれほど受け入れられ喜ばれたのか。魔夜さんはこう分析する。

「他のどの都道府県を描いてもこうはいかない。絶対にものすごい反感が来ると思います。埼玉県の人たちはすごく心が広くて、自分のことを笑い飛ばせるような度量がある。埼玉って便利なところで、農産物も豊富で何でもありますからね。安心していて自信があるから、おちょくられても笑い飛ばせるのかなと感じます」

 また、地方に注目が集まっていることも人気を後押しした。今月、地方自虐漫画を集めた『この「地方ディスマンガ」がひどい!』を発売した宝島社は、「青森県のように、自虐ネタでPRを盛り上げている地方自治体も増え、多くの方がそれを楽しんでいます。その流れで、他の地方ディスマンガ作品も注目され、人気を呼んでいます」と話す。

『翔んで埼玉』は差別をする側の愚かさもギャグとして風刺しており、単なる埼玉いじめの構造で終わってはいない。その土地のことをよく理解していなければ描けないだけに、むしろ愛情を感じる作品に仕上がっているのかもしれない。