■左側から見ないと琵琶湖に見えない? 悲劇のゆるキャラ「びわこぐま」

「琵琶湖をデザインしていたはずが、キャラクターを作ってしまいました」

 琵琶湖の形をしたゆるキャラ「びわこぐま」誕生の瞬間だ。

 全国各地で次々とキャラクターが誕生していた約5年前、「琵琶湖のキャラがない」と考えた大津市のデザイン会社「フエンテ」代表の石津毅さんは、パソコンで琵琶湖を描いていた。ふとした拍子に琵琶湖に目と耳と鼻を付けると、なんと、くまになったのだ。

「びわこぐま」はもともと2次元のキャラクターで、Tシャツなどのグッズを展開していたが、当時の「着ぐるみがなければゆるキャラではない」という風潮に押され、“足”が付いた着ぐるみを制作。向かって左側から見ないと琵琶湖の形に見えないという最大の難点はあるものの、イベントなどで活躍している。

 石津さんは「自分の情熱だけでやっているが、琵琶湖キャラとして認知されればうれしい」と話す。子どものころから滋賀で育った石津さんにとって「琵琶湖は良くも悪くも存在が大きい」そうだ。

■琵琶湖愛を奏でる道路まで!? ご当地ソングが聞こえる道

 琵琶湖への愛は、道路にまで波及している。県は09年、琵琶湖の東西、大津市と守山市を結ぶ橋「琵琶湖大橋有料道路」(長さ約610メートル)にご当地ソング「琵琶湖周航の歌」のメロディーロードを設置した。一部区間を車で走ると、車内や外部で歌の旋律が聞こえるのだ。

 メロディーロードとは、路面に溝を切り込み、車が通過する際のタイヤと舗装との摩擦音をメロディーとして聞こえるようにした道路のこと。琵琶湖やその自然を題材にした琵琶湖周航の歌は、加藤登紀子さんのカバーなどで知られており、居酒屋などで歌われるのを耳にする。琵琶湖大橋では、法定速度の60キロ以下で走ると、ワンコーラスを聞けるのだ。

 車内に響くCDやラジオと、琵琶湖周航の歌の絶妙なコラボレーション。県道路公社によると、もともとは観光振興や利用促進が狙いだったそうだ。琵琶湖愛は果たしてどこまで続くのか。興味は尽きない。(ライター・南文枝)