この流れを後押しする動きもある。女性向けの映像クリエイタースクールの登場だ。「ラブストーリー・クリエイター・スクール」では、脚本の書き方や映像の撮り方をレクチャーする「初心者からの脚本家・監督養成セミナー」を開講している。その目的は、日本から世界に羽ばたく女性クリエイターを育成すること。参加者の作品から最も優秀なシナリオを選び映像化して、カンヌ国際映画祭での「短編部門」にエントリーするというのだ。



 どんな人がセミナーに参加しているのか。セミナーを企画・運営する市川マミ氏はこう話す。

「年齢やバックグラウンドもさまざまな女性がセミナーに数多く参加しています。受講生のなかには、OLや40代の子育て主婦、夫を亡くしてふさぎ込んでいた女性もいる。映画作りに新しい目標を見いだしている方もたくさんいますね」

 こうしたスクールで、映画作りの技術を学び、映画業界のクリエイター職を目指す女性は確実に増えつつあるようだ。

 前出の安川監督は「映画業界で女性視点がますます求められる」としたうえで、こんな期待を寄せる。

「映画は作り手の考えや経験がその糧になるため、セオリーや技術に依拠しない作り手がどんどん増えてくるでしょう。例えば、専業主婦の生態を暴く作品をつくるのであれば、私より専業主婦をやっている方が作ったほうが、さまざまなドラマが描けるのではないかと思います。経歴は問わず、優秀な人がどんどん作品を作れる環境になれば、映画業界もより一層盛り上がると思います」

 一般企業で働くOLや主婦といった“異業種組”が日本映画を支える日も近いかもしれない。

(ライター・石狩ジュンコ)